神界への道を真っ直ぐ走り出したアカネたち。だが、その道は簡単なものではなかった。塗りつぶしきることの出来なかった憎悪たちがアカネたちを襲う。ねぇ、この憎悪の正体って。そう、襲いかかる憎悪の正体にいち早く気づいたのはアオトだった。
なんだか、みんな悲しそう。そう口にしたミドリ。気づいたと思うけど、この憎悪は犠牲になった過去の世界の命よ。神々によって犠牲にされた無数の命。その上に、神界は成り立っているんだから。そして、それはもうひとつの意味を持っていた。
そんなの、悲しすぎるよ。そうこぼしたヒカリ。そう、この憎悪が持っていたもうひとつの意味。そう、俺たちは生まれ変わり続けた世界を否定して、イマの世界を肯定しようとしている。それは即ち、未来への礎となった過去の世界への否定だった。
神界に辿り着くには、すべての憎悪を切り捨てなければいけない。だけど、この散っていった命に罪はないのね。そんなユカリの言葉には戸惑いが隠れていた。せめて、私たちからだけでも、彼らにオヤスミを。もう、泣かないで、苦しまなくていいの。
もし死んだらさ、俺は何にもかも無くなるのかと思ってた。だからこそギンジは思った。俺たちが、無に帰してやろうぜ。きっとそれは安らかな終わり。そのぐらいのことなら、俺たちでもしてやれるはずだ。だから、少しでも早く、一歩でも、前へ。
ひとつひとつ、憎悪に与えられる終わり。それと、俺たちに出来るもうひとつのことがある。アカネが口にした決意。だったらさ、俺たちはコイツらの分まで精一杯生きればいいんだ。胸を張って生きればいいんだ。それが、イマを生きる俺たちだから。
だが、そんなアカネたちが歩みを止めたのは、目の前に新たな人影が現れたからだった。いや、それは人影と呼ぶにはあまりにも大きな翼を持っていた。そう、目の前に現れたのは、一度は封印されたはずの扉の君だった。これは絶体絶命、ってやつね。
一度は倒したはずの扉の君。だが、アカネたちが立ち止まってしまったのは、無数の憎悪が扉の君に取り込まれていく様を目の当たりにしたから。私には名前すら与えられなかった。そう、私は聖なる扉のたった一部。私に名前など、必要ないのだ。
扉の君を前に、身動きのとれないアカネたち。そして、そんなアカネたちの背後から近づく足音。そこまでだ。現れたのはフォルテ、グライフを従えたダンテだった。一番の頭でっかちがやってきちゃったわね。貴様たちは、なぜ世界の決定を裏切った。
ダンテが問いかけた先のふたりの聖人。いいや、愚問だったか。ならば、俺がすることはひとつ。そして、ダンテが構えたレイピア。そして次の瞬間、ダンテの首筋に突きつけられたグライフの爪。貴様は俺に、第四の選択肢を与えてしまったんだ。