滝に打たれていた男を迎えに来ていたリイナ。理由なんか、別になんだっていいさ。俺たちは、俺たちなりにやろうさ。かつての聖戦、先の聖戦、生まれる絆。どれだけ勘を取り戻したか、試させてもらおうか。なめんな、ボケ。誰にも知れることなく終わった戦い。そして戦いの果てに、真鬼精将と真怪魔将は生まれた。
よぉ、迎えにきたぜ。そこは天界の外れの大きな滝。この時代に滝打ちなんて、相変わらずだ。そう、目を閉じ、ひとり滝に打たれていたイッテツ。おぬしが来たってことは、戦いはすぐそこなんじゃな。そして、イッテツは立ち上がる。勘違いすなよ、ワシはワシの平穏のために戦う。それ以上でも、それ以下でもない。
ヒナギクは見つけていた。ひとり、滝に打たれ、そして刀を振り続けていた憧れの存在を。だが、ヒナギクは決して声をかけなかった。その代わり、すべてを真似し始めた。ある日、ヒナギクのいつもの岩場に置かれていた鍛練メニューの書かれたメモ。ふたりの間に会話はない。だが、そこに師弟関係は生まれていた。
成功と失敗、そこには明確な差があった。だが、それは必ずしも勝者と敗者とは限らない。誇り高きセカンドの完成形であるグライフ。彼はそう、成功者だった。だが、そんな彼が勝者とは限らない理由。そこには、彼と対である失敗作が存在していたから。そうさ、この俺こそが勝者であり、完全な敗北を教えてやろう。
終わらない争い、倒れ行く体。ただその様子を見守ることしか出来ないヒカリとユカリ。あの子たちに、格好悪い姿は見せられないよ。活気付くヴィヴィアンとファティマ。だが、それでもなお、リリンの体に傷ひとつつけることは出来ないのだった。
ねぇ、ちょっと息があがってるんじゃないの。そう挑発したのはファティマ。そっちこそ、疲れが見えているわよ。そう返したヴィヴィアン。それはふたりが交わした冗談。そして真実。そう、ふたりの体力はもう残り僅かだった。もう、キメないと。
だが、そんな想いだけでどうにかなる相手ではなかった。知っているよ、私たちはあなたに比べたら無力かもしれない。私も知ってるよ、そんなあなたに対抗することが出来るかもしれない力を。いや、かならず対抗出来ると信じてる。そう、彼らなら。
そして、ヒカリとユカリのすぐ側を走り抜けた人影。その正体はデオンだった。お待たせしました。ふふ、やっと来てくれたのね。顔を合わせ、笑顔を浮かべたふたり。それじゃあ、私たちの最後にしましょう。うん、あとは彼らを信じ抜きましょう。
ファティマ、ヴィヴィアン、杖と輪刃に込めた想い。どうか、届いて。放たれた力がかすめたリリンの頬。血を見たのは幾億年ぶりだろうか。褒美に、私から終をくれてやろう。貫かれたふたりの体。かけよるデオン。あなたたちは立派に戦いました。
相手を失ったリリンの見つめた先にいたのはヒカリとユカリ。ふたりはすかさず臨戦態勢へ。だが、そんなふたりの隣、リリンへと伸びたふたつの影。うちの女王様たちに、手出ししないでもらえねぇか。あぁ、俺の娘たちには指一本触れさせやしない。
一つ目の影、ヴラド。あなたはもう、まともに戦える体じゃない。止めようとするユカリ。みんなが血を流してんのに、戦わない王がどこにいるんだ。ヴラドはそう答えた。それに、戦うのに必要なのは体じゃねぇ、必要なのは覚悟だ。……なぁ、親友。
そう、だから俺たちはここにいる。二つ目の影、オベロン。ヒカリは知っていた。もし、綴られしオベロンの命が果てたとき、なにが起こるかを。駄目だよ、戦ったりしたら。そんなヒカリへオベロンが返した言葉。約束するよ、俺は死んだりしない。
だからオレたちを信じて、オマエらは先へ進め。促したヴラド。うなずくオベロン。勝手に死んだら許さないわ。約束破ったら許さないよ。そして、ふたりの女王はその場を後にした。嘘が下手だな、オマエは。大丈夫さ、俺の呪いはもう、彼女らに―。
ねぇー、僕のこと忘れてない? リリンの隣、現れた水聖人ヨハン。なんか厄介なのが出てきたな。ヴラドがついた溜息。ってことで、アイツはオマエらに任せるか。問いかけた先の更なるふたつの人影。あぁ、任せとけ。ようやく、ワシの出番か。