こうして、オズは竜界から姿を消した。そして訪れたのは、竜界より下位なる世界の常界。ようこそ、ボクの許へ。そう、オズを迎え入れたのは世界評議会の聖人会議長の息子であり、特別な役割を与えられたロキ。共に優しい世界を創ろうじゃないか。
偽りの温かな記憶ではなく、本物の家族を求めたオズ。そして集まったオズの家族たち。僕が優しい世界を創ってみせます。そう、オズは心からそう思っていた。だが、それでもオズは無力だった。そして、北欧の神々に縋ってしまったのだった。
後悔したときにはすでに遅かった。せめてもの償いにと、自分に残されていた時間と引き換えたオズ。そして、力を失くしたオズが運び込まれたのは竜界。そんなオズに対して、いつかと同じ右手を差し出したノア。それでもお前は、私の友なんだ。
居場所ならあった。それは偽りかもしれない。だが、それでも自分の居場所を作ってくれる存在がいた。過去を嘆き、そして過去への償い。オズは再び竜界の力になると誓う。だが、オズの居場所は竜界だけではなかった。まだ、オズの話は終わらない。
自ら告げたサヨナラ。頼りない父でごめんなさい。だが、そんなこと、誰も思っていなかった。そこに言葉はない。だが、それでも家族たちはオズの帰りを待っていた。イマも待っている。サヨナラは認めない。あなたは、私たちのお父さんなんだから。
そう、彼の記憶は偽りだらけ。そして、もう一度綴るなど不可能なこと。だが、決してドロシーは諦めはしなかった。私はあなたを倒して、最古の竜の血を手に入れる。なにを言ってるのかしら。血だけで、綴ることなど出来ないわ。頑張っても無駄よ。
そこに少しでも可能性があるのなら、私は諦めたりしない。いつか教えてもらった魔法。いまの私なら、あのときよりも強い。ドロシーの放つ闇は、魔法と呼ぶには小さく、限りなく純血の竜の放つ闇へと近づいていた。だから、私は負けたりしない。
いくら竜の血を得たところで、私に勝てるわけないじゃない。ハムの血の半分が妖精のものだとしても、残り半分の竜の血は、竜王家の血。ハムの炎がかき消すドロシーの闇。だが、それでも再び生まれたドロシーの闇。どうして、立ち向かえるのよ。
それは、あなたが言ったとおりよ。ドロシーに輸血された竜の血。そう、私の体に流れているのは、あなたと同じ竜王家の血。まさか、それじゃあ。だから、私はあの人のためにも、古竜王のためにも負けたりしない。だって、託してくれたんだから。
これで終わりにしましょう。竜王家の純血なる闇を纏ったドロシー。私にだって、意地があるのよ。竜王家の純血なる炎を纏ったハム。次の一撃で勝敗は決する。そう確信したのは両者共に。最古の竜の祠、小さくも大きな意味を持つ戦いは幕を下ろす。