ここはどこなんだろうか。真っ暗な空を見上げた傷だらけのギルガメッシュ。その後ろ、真っ暗な地面を見つめていたエンキドゥ。お前は私が間違っていたと言いたいのだろうか。ギルガメッシュは問う。だが、その問いにエンキドゥは答えなかった。
懐かしいな、こうしてお前とふたりきりになるのは。かつて、神界はいくつもの世界に分かれていた。そして、神界統一戦争の果てに、北欧の神々が神界の統治者となった。お前が奴らに従うなんて考えたくなかった。だが、その問いの答えもなかった。
そして、答えのないまま返ってきた問い。なぜ人間に加担する。それは、ギルガメッシュの体に流れる半分の人間の血を知ったうえでの問い。私は可能性を見出した。彼らなら、この幾度となく繰り返されてきた崩壊を、止められるんじゃないか、って。
その加担が、なにを意味するかを知ってのうえで、だな。その問いで察したギルガメッシュ。まさか、こんな優しさをもらうだなんて、考えてなかった。エンキドゥはただ、ギルガメッシュを止めたかった。俺はいまでも君のことを、友だと思っている。
ありがとう。その言葉に嘘偽りはない。だったら、友として、私のことを見送って欲しい。私は私で選択したんだ、イマの世界で生きると。沢山の人間に出会った。彼らは弱い。ひとりではなにも出来ない。だけど、それでも決して諦めたりしないんだ。
だから私は、あの日戦いに敗れ、諦めてしまった私の続きを生きたいと思う。ギルガメッシュの心は決まっていた。たとえ神界に歯向かい、処刑されることになったとしても後悔はしないと。私はもう十分に生きた。だから、最後は人として生きたい。
それでも行くというのなら。立ち上がったエンキドゥ。俺にその覚悟を見せてみろ。掛け声とともに現れる無数の獣たち。今度は油断したりはしない。立ち上がり、無数のドライバを構えたギルガメッシュ。それじゃあ、ケンカを始めよう。子供の様に。
無数に飛び交う刃と咆哮。生まれては散りゆく無数の欠片。だが、ギルガメッシュは楽しそうだった。世界が大変だっていうのに、私たちはいったいなにをしているんだろうな。そして、それはエンキドゥも同じだった。これが俺たちらしい最後なんだ。
互いの体を傷つけることなく、欠片たちが散りゆく戦い。だが、その戦いも時間が経つにつれ、無数と思われていた刃も獣も減少していく。そして、初めてエンキドゥの頬に届いたのはギルガメッシュの拳。ふたりとも、体力の限界が近づいていた。
お互いの体ひとつでぶつかり合うふたり。その姿は、まるで武器を持たない人間のようだった。そして、時を同じくして地面へと倒れたふたり。口を開いたエンキドゥ。ようやくわかったよ、君が決めた道の意味が。私だけじゃないさ、共に行くんだ。