女王さまが、前線に立つだなんて立派なもんだな。ロアは鎌を構えながら口にした。あなたたちの王さまだって、前線に立っていたでしょう。対するユカリも鎌を構えていた。あぁ、そうさ。俺たちの王さまは、いつだってその体で戦っていたんだ。
対峙した常闇の死神と目覚めた獅子。ここで会ったからには、俺たちは敵同士だ。互いの鎌が狩りとろうとするのは、互いの想い。これでもね、私は彼を尊敬していたのよ。女王が述べた、かつての王の在り方。だから、いまの彼を許すことは出来ない。
あいつのことがわかるなら、あいつがなにも考えずにあんなことすると思うのかよ。問うロア。思わないわ。否定したユカリ。だけど、彼は神へ加担した。それは揺るがない事実。私はそんなに大人じゃないの。その復讐心は、獅子の咆哮を切り裂いた。
常界に蔓延る麻薬の取引現場に乗り込み、犯人を追い詰めたのは警備局員のロア。そして、怒りに任せて突き出した槍。だが、ロアの槍を伝い流れた血は犯人の血ではなく、犯人に盾にされた友であり同僚の血だった。それは事故だった。命は散った。
提出された退職届けが受理されるのを待たずロアは警備局から姿を消した。ただ自らの手で友の命を奪ってしまったという後悔だけを胸に、死んだように生きていた。そんなロアに退職の話を正式にしたいと、世界評議会から呼び出しがあったのだった。
そんなロアを待っていたのは警備局長ではなくアーサーだった。不機嫌なロアと、上機嫌なアーサー。これを修理しておいた。アーサーが渡したのは、友の形見である鎌型ドライバ。このドライバの新しい名はロディーヌ。これは過去じゃない、未来だ。
想い出が汚された。ロアはそう思い、アーサーへの怒りをあらわにした。あぁ、その顔が見たかった。そして、戦いの果ての勝者はアーサー。友を想うのであれば、もう一度立ち上がれ。そして、アーサーはロアにユーウェインのコードネームを与えた。
最後の晩餐、ユーウェインはいつも通り機関に馴染むきっかけとなった新しい悪友であり同僚である男の隣に腰をかけていた。そして、もう一度立ち上がるきっかけをくれたアーサーと飲み交わす酒を楽しんでいた。あぁ、俺はもう眠ったりしねぇよ。