死刑執行人学園に存在する開かずの間、それは薬学部による実験室。なぜ、実験室が開かずの間と呼ばれているのか、その理由はただひとつ、常に危険な実験が行われているからだった。そう、あまりに危険なため、普通の生徒には扉を開けることすら禁じられていたのだった。そんな部屋にスパジローは篭っていた。
ぐふふ、ぐふふふふ。実験室からもれる気持ちの悪い笑い声。悪いが、もう少し普通になってくれないか。実験室に立ち込める瘴気に臆することなく、学園長は薬学部特別顧問スパジローへと歩み寄っていた。いまのうちに特効薬を作っておいて欲しいんだ。そう、きっと俺たちは、アイツと戦うことになるだろうからな。
いつまで探してるつもりなの。ここは最古の竜の血が滴る伝承のほこら。あなたは、誰。道化嬢が振り向くと、そこにはハムがいた。だから、いつまで探してんのって聞いてんのよ。それはすなわち、諦めを促す言葉だった。だとしたら、私の答えはただひとつよ。両手に集められたのは、道化竜に教わった魔法だった。
そう、私は見つかるまで探す。道化嬢が放った闇をいとも簡単に消し去った古詛竜ハム。アンタ、戦える体じゃないんだから止めときなって。だが、道化嬢の瞳は輝いていた。じゃあ、どうして私を止めに来たの。そう、障害の出現と結びついた希望。私、あなたの話も調べたの。一族を裏切り神に加担した、元お姫様ね。
良薬は口に甘し。それは死刑執行人学園薬学部の実験室に掲示されていた言葉。苦い薬なんて、誰も飲みたくないに決まってます、馬鹿なんですかね。だが実際には違っていた。そう、実験室の主が定義する良薬は、毒薬のことを指していたのだから。
王の間を出た六人。そして、アカネがギンジへと述べた感謝。色々、ありがとな。だが、次の瞬間、アカネは眉間に皺を寄せ、ギンジを見つめた。全部知ってたんなら、なんで先に話さなかった。行き場のない想い。どうして、話してくれなかったんだ。
ギンジはその視線を交わそうとはしなかった。俺には俺の、俺にしか出来ないことをしたまでだ。それは正論だった。ただ我慢を続け、評議会の犬であり続けたギンジの後ろ盾なく、聖常王の誕生はありえなかった。だけど処刑するって言ったアイツは。