君は悪くないよ。見つめる空。何も悪くない。見つめる地面。悪いのはいつも世界だよ。遠ざかる空。だからね、こっちへおいでよ。近づく地面。次の瞬間、彼女の体には別の力が宿ったのだった。うん、お利口さん。生まれたのはクホールという人間。そして、今までの彼女は死んだ。君はね、生まれ変われたんだよ。
アタシはね、もう今までのアタシじゃないの。見つめる空。落ちる速度を、教えてあげるわ。見つめる地面。悪いのはアンタよ。遠ざかる空。最高のさようならをあげる。近づく地面。もう、あんまり悪さをしたら駄目じゃないか。偽闇魔クホールはただただ笑っていた。復讐よ。そう、復讐なのよ。ただの、復讐なの。
南魔王はもういない。その事実は、教団員達に伏せられていた。奴の仕事、絶対嫌だかんな。そう言い放つ北魔王。私、自信ないよぉ。続く東魔王。僕は僕のやるべきことが。最後に西魔王。教祖は肩を落としながら自室へ。だがその矢先、教祖の元を訪ねる二人が。彼女が、新しい南魔王だよ。そこにはアザエルがいた。
お初にお目に掛かります。だが、教祖はアザエルを認めはしなかった。私にとって、南魔王は奴だけだ。今も昔も、これからも。高ぶる感情。それでいいんだよ、君にとっての、南魔王は。崩れたのは砂上の楼閣ではなかった。そしてその日、教団全体にとある通達が。教祖は誰よりも先に、完全世界へと旅立たれました。
寝惚け眼を擦りながら起き上がったヴラド。おはよう、随分と眠ってたわね。覗き込む水色の前髪。冗談は止めてくれ。ついた悪態。こんなこと、冗談でしないよ。そして交わされた密約。オレ達はあの時、世界から弾かれた。でも、やり残したことがあるでしょう。そう、彼はただ、果たせなかった決着をつけたかった。
かつて、強大な力を誇る二人の王が存在していた。天界を統治する精王と、魔界を統治する魔王。二人は共に禁忌を犯し、世界から弾かれていた。そして時は過ぎ、二人の王は再び対峙する。だが、あの時と形を変えて。天界を率いるのは、堕魔王ヴラド。そして、魔界の王の席についていたのは、目覚めた堕精王だった。
心に闇を抱えていない人間などは存在しない。もし、抱えていないというのなら、それこそが偽善という闇だろう。みんな、お利口さんのフリが上手ね。少女は言う。ならば、フリが出来ない人間はどうすればいいのか。闇は深くなるばかりだった。
右も左もわからない毎日、少女は気がつけば崇められていた。だが、そんな少女のすぐ傍にいつもいた一人の女性。みなみまおーは、ずっといっしょにいてくれますか。もちろんです、教祖さま。そんな幼き日の思い出を、新南魔王は踏み躙ろうとした。
可愛い女王サマだこと。天界の女王の隣りには堕魔王が。私はあなたのことを信じたわけじゃない。オレはヤツと戦えればそれでいい。なぜ彼女は彼を受け入れたのか、それは天界を滅ぼす力を持つとまで言われた彼が、悪人には見えなかったからだ。