ヨトゥンと名付けられた機体は第六世代の自立兵器型ドライバだった。自立も自律も、やっぱり私が一番乗りね。そんな少女の元に集まった原初の機体に煌びやかな装飾が施された機体、そして長き眠りから覚めた六体の機体だった。彼らは結局、失敗だったよ。敗れ去ったナンバーズ達。そろそろ、君たちの出番だから。
着々と準備を進めていた少女の元に届いた知らせ、それは天才である彼女にとっても、予期せぬ出来事だった。教団員を撃退した偽物の機体、修理を施した天才少女の名前、その全てが彼女をわくわくさせた。水機兵ヨトゥンに下された最初の指令、それは聖暦の天才の殲滅。天才はね、何人も存在したらいけないんだ。
自分が人間なのか、それとも機械なのか、既にイージスには判断がつかなかった。彼女にとって種族など第三者が差別する為に設けた記号でしかなく、彼女にとって大切なことは、まだ戦える、たったそれだけのことだった。戦い続けさえすれば、きっと守ることが出来る。彼女にはそこまでして、守りたいものがあった。
最期まで戦い抜いた彼女に与えられた六聖人の肩書き、風聖人イージスがそれを受け入れたのには理由があった。戦いの果てに失った君主、そしてその君主の名を未来永劫忘れられぬようにと願ったからだった。そして、その血筋に迫る脅威。貴方様の血を、汚させるわけにはいかない。彼女は誰の盾になるのだろうか。
気分転換も必要だぴょん。そして届けられた衣装とCD。メビウスは耳を塞いだ。そんな塞いだ耳元に流れる心地よい音楽。私はいつまで、白いままでいられるのかしら。それは彼女が抱いた不安であり、そして希望でもあった。未来の声が聞こえなくなった今、少女は耳元の声に耳を澄ます。きらり、光りますように。
天才は天才であるが故に、天才などは存在しないと定義した。それは絶対など絶対に存在しない時点で、絶対が存在しているパラドックスと同義であった。この言葉に意味はあるのか、ないのか。その答えのひとつが霜の巨兵を産みだしたのだった。