少年は炎に出会い、旅を始めた。繰り返される数多の出会いと別れ、そして、聖なる扉を目指していたはずの旅は、いつしか大きな背中を目指す旅へと変わっていた。いつか追いつきたい、そんな願いを込めた茜色のピアスは、今も左右で揺れていた。
目の前で消える大き過ぎた背中。間に合わなかった。駆けつけたのは筆を手にした花獣。最後の約束、受け取ったよ。少年は立ち上がり、そして拳に炎を灯す。だから俺は、生きるんだ。その炎は反撃の狼煙となる。だって俺は、炎才の息子なんだから。
全ては、自分を変えてくれた少年の為。炎の大精霊は炎に還りながら、それでも少年の側を離れなかった。そなたと彼が親子であれば、そなたと妾は何であろう。重ね合わせる拳、預け合わせる背中。戦友って呼ぶんだよ。二人はニヤリと揃えて笑った。
観測者に導かれるように向かった塔、そこではまさに最後の審判が行われようとしていた。そして顔を合わせる四人の友達。その場にいない二人のことを思いながら、そんな二人の為にも、最後の力を振り絞るのだった。全ては、聖なる入口を壊す為に。
少年が見つめていたのは重なったネックレス。失った仲間達。だけど、少年に休む暇などなかった。聖なる出口を求め、始まろうとする聖戦。今度こそ、全てを終わらせるんだ。再び炎を灯した少年の背中は、やがて追い越す背中を予感させたのだった。