自由と引き換えの約束を果たそうとする堕ちた獣と、闇を包んだ少女達の前、深く暗い紫から現われたのは、鎧型ドライバ【アッピア】を纏った第零世代人型ドライバ【ラティーナ】だった。アナタヲ、セイナルトビラヘ、ツレテイク。丁度良かったわ、その汽車、乗せて行ってもらえるかしら。少女の瞳に闇が見えた。
シケンノ、トッパヲ、ミトメマス。【アッピア:ドゥーエ】とその闇を引き裂いたのは奈落の大蛇だった。セイナルトビラヘ、ムカイマス。告げられた行き先。違うわ、魔界へ向かって頂戴。遮った行き先。闇を包んだ少女は、聖なる扉の真実ではなく、幼き日の約束を果たそうと、自らの失くした記憶を求めていた。
突如、深い闇が訪れる。それは朝であろうと、昼であろうと、夜であろうと、陽の光など関係なく訪れる。迷い込んでしまったら二度と出ることの出来ない闇。だけど、その闇の奥深く、聖なる扉行きの夜汽車を止めた夢幻の駅は確かに存在していた。
あの日、白い雪が降ってた。天界に捨てられひとりぼっち、寒さに震えた体に、もう一度生きるという希望をくれたのはオマエだったな。そっか、俺が生まれた世界では一年に一度しか訪れない聖なる夜だったっけ。おっきな贈り物、もらっちまったな。
これで、良かったんだ。聖なる入口は閉じられた。俺の命なんて、安いもんさ。どうせあの冬の日に、一度は失くしたはずなんだから。聖なる出口はきっと、新しい季節を生きるアイツらが開いてくれる。あの冬の日の出会いに、ありがとう、さよなら。