魔界<ヘリスティア>の竹林、月御殿で夜涼みをするカグヤ。ドライバの【ミタラシ】と共に、月を頼りに歌を詠む。それは遠き故郷、月への想い歌。いずれ訪れる十五夜、逃れ得ぬは恐怖と不安、曇らせる心。やがて明け始める空を見上げ、彼女は再び歌を詠む。どうか夜よ明けないで。願い虚しく、沈み始める月と空。
竹を揺らす風、わずかな葉音だけが響き渡る静寂の夜、欠けた月が満ちる頃。受け継がれた紫の王衣に袖を通した彼女が【ミタラシ・ゲッコー】と共に詠みはじめる歌。月下に舞い踊る願いの言の葉。今宵、十五夜に紡ぎ出された歌、それは、満ちたての月が照らし出した、紫の女王カグヤの、はじまりの歌。
生い茂った魔界の竹林の中、月夜に照らされた月御殿、故郷の月へと想いを寄せ、詠みはじめた歌。それは新たな紫の女王のはじまりの歌。十五夜のお月様が照らす言の葉を頼りに、満ちた月が欠けるより早く、生まれたての女王の、すぐ傍へと。
早くそこどけよ。ヒスイが睨みつけたのは棍を構えたウロアス。止めとけ、この男は歴代の古竜衆とは訳が違う。制止したヴェルン。あぁ、俺も無駄に争いたくない。だから、聞かせてもらおうか。それは先の聖戦の結末に現れたヴェルンの意図だった。