オリナを残し、先へ進むミドリは嫌な風を感じていた。どうしてここの風は、悲しいんだろう。直後、目の前に現れた笑顔。一緒にいるんだよね、私にはわかるよ。その言葉が向けられたのはミドリではなく、風精王だった。そして笑顔は歪む。けひひ。
本館には行かせねぇよ。無数の銃声が鳴り響く。犬っころはお手でもしてろ。だが、差し出した左手には既に力が入っていなかった。勝てる戦いには興味ねぇが、これも俺の役目だ。振られ続ける尻尾は、興奮の表れ。始めようか、レッツ、ハッピー。
燃え尽きた炎のあと、再び燃え上がる炎。始まったヒメヅルとサニィの戦い。どうしてかな、初めてな気がしないよ。それはヒメヅルの刃の一撃を受けての言葉。不思議だね、私も初めてな気がしないよ。同時にヒメヅルもサニィの一撃を受けていた。
ふたりを止めなくていいのか。フレイムタンは立ち上がることの出来ないふたりへと問いかける。だってほら、あの顔を見てごらん。アカズキンが見つめるのは、切れた唇から血を流すヒメヅル。ほら、あの子もさ。サニィもまた血で前髪を染めていた。
私が愛する人と生きる世界に、あなた達は必要ないの。ムラサメの水を滴らせた刃がレイニィを襲う。そう、私はふたりきりで過ごせる世界を求めてるの。姉妹という絆を越えた愛。だから、死んでもらえるかしら。だが、レイニィは刃を弾いてみせた。
私の愛する人はみんな、もう二度と会えなくなりました。レイニィの胸を締め付ける旧友の声。みんな、人間への愛を知ってしまったせいで二度と会えなくなりました。だから私は、信じません。勢いを増した大粒の雨は、レイニィの頬を濡らしていた。
こっちからいくぜ、ベイベ。戦場に吹き荒れる風。ずいぶんご機嫌な風だな、笑ってやがるぜ。刀を構えるヤスツナ。なに言ってんだ、今日の風は泣いてるぜ、ベイベ。そして、同行していたウィンドベクターはふたりの会話を理解することを止めた。
風の泣き声が聞こえないなんて、漢失格だぜ、ベイベ。泣き声のような風を放つウィンディ。そんな風を踊るように斬り捨てるヤスツナ。あぁ、俺に斬られて笑ってやがる。理解不能の戦い。だが、それは確かに世界の行く末を握る戦いのひとつだった。