急に海が見たいとか言われても、あんま外出んの好きじゃねーんだけどな。ったく、オマエはいつも突然だったよな。仕方ねーからアイツも誘って三人で行ったけどさ。俺が、世界一海の似合わない男だって知ってたくせに、一体何の嫌がらせだっつの。
あの人が帰ってから、お兄ちゃんいつも退屈そうだった。でも、仕事を継いでからは一年に一度だけ、楽しそうにしてる日があったの。二年ぶりに会ったっていうのに、とっておきのプレゼントを渡してきた、って。久しぶりなのに、あの人の話ばかり。
すでに始まっていたオリエンスとサマエルの死闘。けひひ。ケヒヒ。互いに発する狂気の風。その風が切り裂く身体。ねぇ、あんたらは神の力を得て、それで幸せなの。問うオリエンス。だから私は、そこがあんたらの居場所なのかって聞いてんのよ!
サマエルは問に答えることなく、ただ狂気の風を発し続ける。いくらオリエンスとはいえ、神格を植え付けられたサマエルを相手に、無事ではいられない。奪われた両足の自由。空からの攻撃を受け続けるしかないオリエンス。もし、私に翼があったら。
それなら、貸してもらえばいいよ。そんな言葉とともに、オリエンスとサマエルの間に割って入ったニミュエ。先生!?久しぶりの再会。あのとき、私は君たちを救えなかった。だから、イマくらいは先生をさせて。ほら、お友達を助けてきたんだから。
オリエンスが振り返る間もなく、オリエンスの身体は上空へ。翼くらいになら、私にだってなれるわよ。そう、オリエンスの身体を抱え、空を飛んでいたのは先の戦いで傷ついたラプラスだった。さぁ、みせてあげてよ、あなたの狂気を孕んだ風を。
友達だったふたりの少女。別たれた道。ふたりが果たした再会。気持ちいいわね。風をかきわけ、空を飛ぶ。いつかさ、また4人で遊ぼう。交した約束。それじゃあ、さっさと殺ってやろうじゃん、けひひ。こうして、新旧東魔王の戦いは幕を閉じた。
それがオマエの忠誠だってんなら、俺が正面から受けてやるよ。マハザエルと対峙したアマイモン。響き渡る獣の唸り声と無数の銃声。いつになく振られる尻尾。なんで俺、こんなに興奮しているんだろうな。そう、それはただの興奮ではなかった。