人の姿をしながらも黒い翼を持ち、頭に獣耳を生やした。左肩に見えるのは「000」の三文字。そう、それは次種族<セカンド>のプロトタイプを意味する三文字。手にした手袋型ドライバ【ソロウ】が壊すのは、自らが生まれた悲しみか、それとも、この世界に対する悲しみか。今、閉じていた翼は広がる。
お迎えありがとう。上品な声が聞こえてきたのは遥か彼方の刻の狭間。天上獣がお迎えに上がったのはたった一人の神様だった。さぁ、行こうか。差し出される【ソロウ:セカンド】、観測者を乗せた風は変わり始めてしまった未来の行方を目指す。彼らに背負わせるには荷が重過ぎる。大きな時は、動き始めた。
アタシを誘ってくれて、ありがとね。おかげさまで外の世界を知ることも出来たし、新しい友達も出来たんだ。なのにさ、アタシ、まだ何の恩返しも出来てないよ。もっと戦いたいんだよ、もっともっと世界のこと教えてよ。だから、早く帰ってきてね。
勅令だとか、真意だとか、そんなのもうどうだっていいんだよ。わかったんだ、全ては世界の為だったってこと、自分を犠牲にしてまで新しい道を開きたかったんだろ?だけど、いつまでも輝いていてくれよ。俺はいつだって、光あっての闇なんだから。
夢幻の駅が聖なる出口行きであるのなら、この無限の駅は聖なる入口行きであろう。限られた無の力、そして、そんな聖なる入口へと向かう夜汽車を走らせるのは、ノアの一族ではなく、天上から舞い降りた1人の、いや、1体の獣だった。
かつて神と竜は争っていた。似たように天界と魔界も争っていた。だが、全ては聖なる扉が閉じられると共に、終焉を迎えた。そして今、再び聖なる扉は開かれた。やはり、歴史は繰り返されるのね。観測者は、繰り返される歴史を観測していた。
そんな、まさか。先に倒れたのはドロシーだった。所詮は人間だってことよ。だが、ハムの息も上がりきっていた。よくも無駄に足掻いたわね、無駄だって言ったのに。ハムが口にしていた「無駄」の意味。例え血を手に入れても、誰が綴れるのかしら。
その役目は、ワタシに任せてもらえますかな。鳴り響く笛の音。現れたウサギのキグルミ。そんなキグルミの背後、ドロシーが会いたくて仕方のなかった者たちが。さぁさぁ、これで形勢逆転、ドラマチックなフィナーレをあなたへお届けしましょう!
トトが生み出した無数の水竜。天へと誘うかのごとく、ハムを取り囲み舞い踊る。パレードはまだ、始まったばかり。アナタの為の特等席で、水と風と光と無のショーをご覧ください。そう、オズのことを想っていたのはドロシーだけではなかった。
水竜をつきぬけ、風の刃が舞い踊る。急な竜巻にご用心。もちろん、その行動に言葉が乗ることはない。だが、その行動に乗せられていた想い。みんな、ありがとう。そんな彼らの姿に、ドロシーはただ胸が締め付けられる。そう、私だけじゃないんだ。
空を翔る獅子。それは空想上の生き物。だが、レオンはただ神々しく羽ばたいてみせた。突き抜けた天井。光届かぬ祠へ差し込む光。そして、降り注いだ光の羽が突き刺した体。それじゃあ、最後に仕上げといこう。不器用な君たちに相応しい仕上げさ!
現代の技術を以てすれば、第一世代であるブリキに言葉を与えることは出来た。けれど、そうしなかったのは、そうせずとも気持ちを伝えることが出来たから。そんなブリキの想い。最後は物理で押しつぶしちゃえ!それが、君たちらしさってやつさ。