もう一度、やり直したいと思わないかい。それは命以外の全てを失った青年へ囁かれた言葉。キミが望むもの全てをあげよう。その代わり、残されたその命を、預けてもらうよ。藁をも掴む想いで選んだのはシュトロムとしてもう一度生きる道。良いんだよ。それで良いんだよ。そう、全ての敵をね、思う存分憎むんだよ。
ようこそ、いらっしゃいました。教団本部からほど近い屋敷。おい、こんな結末、聞いてないぞ。偽水竜シュトロムは人であったことを忘れようとしていた。キミに結末を選ぶ権利はないんですよ。吐き捨てた言葉。あの子も良く働いてくれました。そう、偶像として、最高の仕事をしてくれました。そろそろ、時間です。
反発する血はやがて飲み込まれてしまう。そう、残るのは一方の血のみ、より強い血のみ。下位なる存在である人間が、上位なる存在の血に飲み込まれるのは当たり前のことだった。それならば、下位なる種族同士が交わった時に、残る血とはいったい。
決戦の日へ向けて鍛練を怠らない炎魔将の元を訪ねたのは赤の女王。共に幼き日を過ごし、そして大人として過ごすこれから。もう、あの日みたいに笑い合うわけにはいかないんだよね。そう言った炎魔将は刃を鞘に収めた。私達の日常を、取り返そう。
進軍、開始。不思議の国の全勢力が従うのは、王という地位を捨て、戦場へと降り立った蒼水魔将アリスだった。それでも彼らが彼女に付き従うのは、地位ではなく、彼女そのものへの信頼。さぁ、パレードを始めましょう。響き渡る歓喜は悲鳴、兵隊が閉ざす退路。閉じ込められた多くの妖精。楽しんでもらえるかな。
蒼水魔将の前へと立ち塞がった美水精将オノノコマチは問う。なぜ、誰も殺さない。天界の辺境の街は氷で閉ざされた。だが、そこに住まう妖精は誰一人、命を落としてはいなかった。それは紅炎魔将が焼き払った街も同様に。そして、その問いへの返答。善悪を生死に重ねる、キミたちがそんな浅はかな考えだからだよ。
9回裏、3対0、2アウト、ランナー満塁、一打逆転の好機。告げられた代打。バッター、統合世界一バットの似合う男、サンタクローズ。沸き起こる歓声。1球目、立ちあがるキャッチャー。スタジアムの誰しもが察した敬遠。それでも俺は打ってみせる。2球目、振りぬかれたバット、白球はフェンスを越えて、今。
少年に与えられた名前、アルトリウス。それはかつて存在したとされる偉大な王の名前。そして、少年にとっての新しい始まりの名前。少年はその名に恥じぬように、王になろうとした。その道は険しかっただろう。だが、それでも少年は王道を歩き続けた。それこそが、自分がこの世界に生まれた意味だと信じ続けて。
やがて時は経ち、少年は青年へ。青年が歩む王の道、付き従う12人の騎士たち。青年はかつて、自分が新しい始まりを与えられたように、12人へ新しい始まりを与えた。あぁ、俺はお前たちがいたから、ここまで歩いて来れたんだ。そして、それは騎士たちも同様。俺たちも、アンタがいたから、ここまで来れたんだ。
そこにはひとつの円卓があった。そこにはいくつもの想いがあった。そこにはいくつもの覚悟があった。そこにはひとつの誓いがあった。そこにはひとりの王様がいた。そこにはひとつの愛があった。そこには12人の騎士がいた。そこには沢山の笑顔があった。始めよう、俺たちの晩餐を。そこには最後の晩餐があった。
目覚めなさい。聖暦という時代に、統合世界に生まれたロキ。いや、選ばれたというほうが適切だった。あなたは今日から私の息子よ。人間という身体に植え付けられた神格。あなたは自由に生きていい。その神格がすべてを教えてくれるから。そして創られた神は、存在しない証拠を隠すために仮面をつけたのだった。
ラウフェイは耳を澄ます。届けられる世界の決定。初めから決められていた時代の流れ。世界は何度も壊れ、そして修復されるたびに強くなる。そう、いまも昔も、こうやって私たちは世界を導いてきたのだから。それこそが、生きとし生ける者の最大の幸福だと信じて。犠牲のうえには、更なる未来が広がるものなの。