風の美女はひとりだった。あの頃は、いつも四人だったのに。同じ世界で生まれたにも関わらず、離れ離れになってしまった彼女の耳に聖戦の話は遠かった。だったら目を覚まさせるのが、あなたの役目じゃないかな。湖妖精はそう優しく声をかけた。
久しぶりの勝負だな。人差し指を支点に回された二丁の銃。対するは光輝く大剣。対峙したランとヒカリ。お前はなんとも思わないのかよ。ランの挨拶代わりの銃弾。アイツは、お前の兄貴なんだろ。銃弾を弾いたヒカリ。だからこそ、私は止めたいの。
なにか、事情があってあんなことしたと思う。だから、きっとみんな理解してくれると思うの。ヒカリはアーサー処刑組にいながらも、アーサーを信じていた。世の中、そんなに甘くねぇよ。ごめんなさいで済む話なら、いま俺が立ち塞がってねぇって。
ヒカリを追い詰めるラン。俺は無駄に生死の境を彷徨っちゃいないんだ。距離が離れれば銃弾を撃ち込み、近づけば銃の刃で切りつける。そして、ヒカリのこめかみへと突きつけられた銃口。だけどさ、どこの世界にボスの妹を殺す馬鹿がいるんだよ。
アーサーの執務室へ、トリスタンが案内してきたのはラン。ちっす、今日から異動になりました。元査察局のランです、宜しくおなしゃーす。目を合わせることもなく、適当にうわべを述べる。査察局長は勤務態度の悪いランを押し付けたいだけだった。
だが、アーサーはランを歓迎し、パーシヴァルのコードネームを与えた。パーシヴァルはそんなアーサーを不気味がり、異動に異を唱えていた。案の定、真面目に仕事に向き合わないパーシヴァル。同期のユーウェインと共に仕事をサボる日々が始まる。
しびれを切らしたトリスタンはふたりを呼び出した。どうしてあなたたちがサボっていても、処罰が下されないか考えたことあるの。そう、ふたりが放棄した仕事は、すべてアーサーが片付けていたのだった。ボスは言っていた。それでも信じる、って。