あなたは取引材料だから。はだけた衣服、繋がれた手錠、それでも堕風才を睨み付けたのは永久竜。光届かない教団の地下牢、評議会を抜け、教団に身をおいたラプラスは少し退屈そうにしていた。哀れね、あんな裏切りの道化竜の為にここまでするなんて。鋭さを増した睨む眼光。もうすぐね、世界に完全が訪れるのよ。
久しぶりね。囚われた永久竜の元に顔を出したのはイヴァンだった。いくら信じてもね、王と、その道化に活路は見出せないわ。統合世界に加わり、神界との均衡が崩れた竜界と、その地に生きる者はみな、上位なる存在ではなくなっていた。王の証を失くした竜王じゃ、きっとこの世界を変えることは出来ないわ。
そろそろ時間が来たようね。雷帝竜イヴァンを呼びに来た教団員が伝えたのは、とある鞘が届けられたという知らせ。教祖は象徴でしかなく、それはとても脆い存在よ。そう、王も所詮、象徴でしかないの。込められた皮肉。だが、永久竜が動じることはなかった。私は信じている、彼が持つ、もう一つの意味と可能性を。
邂逅を果たした竜と竜。同じ世界で生まれた二人を遮ったのは鉄格子。どちらが外でどちらが内か、それは状況を見れば一目瞭然。だが、果たしてそれは真実だろうか。見方を変えれば、世界は変わる。二人を遮ったのは、固定観念でしかなかった。