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アリトンの刀が斬り裂くのは、エギュンから伸びた無数の触手。だが、いくら触手を斬り捨てようと、その触手は無限に生まれていた。これじゃあ、きりがない。対するエギュンは、ただ不敵な笑みを浮かばせていた。そっか、僕はここまでなんだね。
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アリトンが決めた覚悟。そして、アリトンは自身に残された力をすべて解放し、纏ったのは大きな水竜。君ごと、すべてを飲み込もう。そして、ともに帰ろう。母なる海へと。悪くないよ、こんな終わりも。僕は僕なりに、楽しい人生を過ごせたんだ。
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ハハハ、ハハハハハ。狂気を纏ったアリトン。そうだよ、僕は悪魔だ。この世界に、僕は必要ないんだ。そして、水竜を纏いしアリトンは空を泳いだ。次の瞬間、鳴り響く竜の咆哮。エギュンを飲み込みながら、水竜は地上の果てへ、母なる海へと。
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そうさ、これでよかったんだ。海へと沈んだアリトン。その瞳に捉えたエギュンの最期。そして、アリトンは海の底へと沈み続ける。そう、アリトンにはもう這い上がる力は残されていなかった。だが、沈みゆくアリトンは、ある言葉を思い出していた。
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違う、これじゃダメだ。そう、最高の現世は終わらない。イマの世界を僕たちは生きなきゃいけない。アリトンを生かしたのもまた、心に住まう散った少女の想い。そんなアリトンの体を優しく抱きかかえ、海から救出したのはサミダレ:グスクだった。