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さぁ、到着だよ。祠の最深部、岩のくぼみには、枯れることのない最古の竜の血が。これでやっと、もう一度会えるんだ。目を輝かせていたドロシー。その前に、ワタシからお話をさせてもらってもいいかな。やけに真剣な声は、ボームのものだった。
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彼を再び綴ったとしても、それは彼の物語の続きでしかない。その言葉がいったいなにを意味しているのか。そう、彼には綴られし者という、逃れることの出来ない運命が待っている。そんな過酷な運命に、彼を再び呼び戻しても、本当にいいのかな。
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ボームは知っていた。この先、オズに与えられるべき運命の結末を。彼の命を握っているのはワタシじゃない。アイツの気分ひとつで、彼の結末は訪れてしまう。命は失われてしまうんだ。だからアイツは、彼を生かし続けた。いつでも殺せるんだから。
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それなら、答えは簡単じゃない。自信満々の笑みを浮かべたドロシー。って、それは私の言葉じゃないか。そう言いながら見つめた先にいたのはカナン。約束する、そんな運命、私が壊してみせるって。そして、カナンは一足先にその場を後にした。
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やっぱ、会うのは照れくさかったのかな。カナンを見送ったドロシー。それじゃあ、始めるよ。筆を手にしたボーム。書に綴られた文字は踊りだし、すべての文字が炎に包まれる。その炎が落とした竜の影。ドロシーの瞳に溜まった涙。…お帰りなさい!