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宇宙エレベーターの開通式を間近に控え、賑わいを見せる学園都市。その街で、とある扉の噂が囁かれていた。少女が歌う奇蹟の歌と、不思議な扉が重なり合い、幾つもの奇蹟を生み出していく。再び神の力を宿した少女の存在も、またその一つだった。
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それぞれの想いを抱えて、次々と扉の中へと飛び込んでいく人々。無数の扉が連なるこの世界で、科学と魔術が交差し、奇蹟の物語が紡ぎ出される。平等な平和を望む彼女に訪れたのは、少し早過ぎた出会い。これもまた一夜限りの奇蹟の一つとなる。
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とある扉の噂話から始まった奇蹟の物語も今や、折り返し地点へと辿り着く。少女の歌に導かれ、一つの終着点を目指す人々。彼もまた、その一人。嘘をつくことが生業の彼が、嘘偽りの無い想いを持って、扉の先に消えた少年の後を追いかける。
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闇を照らす炎もまた、この世界へと降り立つ。奇蹟が生み出した、この世界の裏側。暗く、深い闇の底へと落ちてしまった少女を追って。炎が暗闇を照らし、幻想殺しの少年の行く道を指し示す。闇に落ちていく少女の腕を、彼の右手が掴み取る。
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扉を、そして、闇さえも切り裂いて。その眼は、開かれた扉の、更にその先を見据える。奇蹟の夜は、もう間もなく終わりを迎えることだろう。彼女は信じている。少女を救った少年が、ここへ辿り着くことを。この扉が再び閉じてしまう、その前に。