-
走り去っていった仲間の後、その背中を追う少女。伸ばした腕は届かず、自らも迷い込んだ扉の世界。招かれざる者に、悪意達は容赦なく襲いかかる。傷付き、倒れそうになっても、それでも少女は走り続ける。届かぬ想いを、黒い風に乗せて。
-
一目見たその時から、この心は凍りついたままだった。決して溶けることの無いこの想いが、男の体を前へと突き動かす。流れゆく水の心さえも、いつか凍り付かせてみせる。ふと空を見上げると、さっきから降り続けていた雨が止んでいた。
-
扉の中に広がっていたのは、光届かぬ闇の世界。闇は幻を作り出し、男を更に深い闇へと引き摺り込む。全てが飲み込まれるそうになった時、相棒の声が聞こえた気がした。奮い立った男は、闇の世界を自らの影で染め上げていった。
-
磨いてきた牙は、いつか火竜を狩る為のもの。それは、幼き日に誓った約束だった。小さき友への、嘘偽り無い誓いを胸に、男は無数の扉を潜り抜けていく。辿り着いた扉の奥で、闇に取り囲まれた友の姿が。男が放つ閃光が、闇を切り裂いていく。
-
強さ故の傲慢。傲慢故に最強。虎は、その名を天下に轟かす為に更なる力を求めた。扉の世界の闇さえも、我が物に。だけど、やがて彼女は気付くだろう。この世界に降り立った大いなる死の前では、いかに自分が無力な存在であるかに。