-
成長した水の刃は、目の前に存在する全てを突き刺そうとしていた。鋭さを増した水は、刃となり、全てを突き刺す。そう、それが自らが統合世界に存在する理由だと言わんばかりに。刃と化すその水は、留まるのか、流されるのか、それともまた。
-
成長した水の猫の頭には、美味しい食べ物のことしかなかった。だけど、それは正常なこと。生きる為には食事をし、そして食事をするのであれば、美味しいに越したことはない。食いしん坊の猫は、売店のハワイアンソフトクリームに興味津々だった。
-
彼と一緒に、来たかったな、そんな想いを巡らせていたのは癒乙女。少し長いはずの丈、少し背伸びをした背中が大きく見えたのは、きっと、誓いを果たしたから。だけど、その背中に感じた不吉な予感は、彼女の知らない場所で現実として訪れていた。
-
浅い眠りの中、よく見る夢があった。そこは綺麗で平和な世界。だけど、なぜか自分だけはその世界からはみ出していた。なんでこんなに平和な世界なのに、自分の居場所はないのだろうか。目が覚めると、いつもの暖かな腕の中、その夢は忘れていた。
-
噛み付こうと思えばいつでも噛み付けた。引っ掻こうと思えばいつでも引っ掻けた。逃げ出そうと思えばいつでも逃げ出せた。だけど、それでも主人の傍にいたのは、外された手袋だけじゃなく、時折見せる寂しそうな笑顔があったからだった。