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緑帝楼閣に吹いた風、それは始まりの風。天界<セレスティア>からお目見えした風を司る大精霊は向かい風を吹かせた。そして、この強い向かい風を見事止ませることが出来た時は、更に強い追い風を吹かせると、そう約束をして。
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風に乗ってゆらゆらと、住み着いてしまったのは悪戯な風の妖精。楼閣の居候は何をするでもなく、ただ風の行方をぼんやりと眺めていた。開かれた扉により変わってしまった風が、また、更に変わり始めたことに、気がついていたのかも知れない。
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風を司る大精霊が作り出した追い風に乗ったのは、開かれた扉<ディバインゲート>を目指した者達だけではなかった。そう、風に乗り、猪突神進の如く追いかけてくる風の猪達。追いつかれるよりも前に、楼閣を抜けることが出来るか。
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吹きつける風が少し冷たく、だけど心地よい昼下がり。緑帝楼閣の一角、緑色のコートに袖を通した乙女の昼下がりは優しい緑の香りがした。摘んだばかりの四つ葉に、審判の訪れを、阻止できるようにと、ただそれだけを願っていた。
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遠くから音が聞こえた。そしてその音は、徐々に大きく、大きすぎる程に。非常事態に気が付き、警報の鐘が鳴らされた頃にはもう、その鐘の音は轟音にかき消されていた。進撃力の暴走は、避難する時間さえも与えてはくれなかった。