そして、天界、魔界の全勢力の戦いは無駄ではなかった。すでに創魔魂、創精魂を失っていたリリン。アイツらは、立派に仕事をしてくれた。そう褒め称えたヴラド。ありがとう、みんな。感謝を口にしたオベロン。だから、今度こそ決着をつけよう。
ここまでの働きとは、予想外だったよ。少し喜びをみせたリリン。そう、私は望んでいたのかもしれないな。その言葉は誰にも届かない。だがそれは、確かにリリンの口からこぼれた真実。始祖である彼女は、いったいなにを望んでいたのだろうか。
再び決定者の竜の血を解放したヴラド。そして、共に決定者の神の血を解放したオベロン。続いて、ヒスイが解放したのはかつて神界統一戦争の敗者となった世界を統べていた天空神の血。そう、3人が合わせた力は、決定者ひとり分の力を超えていた。
最初の攻撃を放ったのはオベロンだった。その手に集められた光の力。そして、その予想外の行動に、思わず笑みを浮かべてしまったヴラドとヒスイ。オレたちも、負けてらんねぇな。変色したヴラドの左腕。そして、まるで竜のように踊るヒスイの棍。
次々にリリンへと放たれる攻撃。そして、その攻撃をかわすことなく、一撃、一撃と丁寧にその体ひとつで受け止めたリリン。そして、リリンは確信した。この痛みこそが自分の生まれた存在理由だったと。私は嬉しい、嬉しいよ。もっと、全力でこい。
激化する戦い。交わされない言葉。だが、それでも交わされていた想い。神々が創る未来に、意味はあるのだろうか。たとえ、神々が創らずとも、世界は廻り続ける。その選択をするのは、私たちじゃなかった。そう、選択するのは彼らだったんだ。
それじゃ、オレから先に行ってくるわ。ヴラドが決めた二度目の覚悟。だから、コイツのこと頼むな。ヴラドがヒスイへ向けた言葉。ヒスイはヴラドの言葉の意味に気づいていた。そして、ヴラドを止めはしなかった。それが、お前の決めた道なんだな。
オレの身に宿る竜の血よ、オレにあの日と同じ「守る」力を与えてくれ。そう、ヴラドが選んだ「守る」べきイマの世界。そして、覚悟を込めた一撃。すかさず、後を追うオベロン。ううん、ひとりじゃ行かせない。共に行こう。共に「戦う」力を俺に。
昔々、ふたりの王様がいました。ひとりの王様は「変革なき平穏」を求めました。ひとりの王様は「犠牲の先の革命」を求めました。やがて刻は経ち、ふたりの王様が歩んだひとつの道、それは「イマを生きる者たちへ、終わることないイマの世界を」。
どうして…。立ち尽くしたヒスイ。どうしてなんだよ!返ってこない答え。自らの子らの成長と引き換えに、始祖リリンは最期を迎えた。そして、イマの世界と引き換えに、聖魔王ヴラド、聖精王オベロンは最期を迎えた。なんでだよ、なんでなんだよ!