遂にリリンと対峙したオベロンとヴラド。どうしても、お前たちは私に抗うというのだな。ふたりは頷きもせず、リリンを見つめていた。そして、ふたりはその先のもうひとつの場所を見つめていた。そう、自分たちが歩みだした道の先の死に場所を。
どうやら、オレたちの夢は果たせそうにないな。そんな言葉を口にしたのはヴラドだった。だけど、大丈夫、きっと俺たちの道は続いていく。そんな言葉を口にしたのはオベロンだった。あとのことは、オレらの可愛い女王様たちに任せるとするか。
オベロンが放つ攻撃がいとも簡単に切り裂いたリリンの柔肌。そうか、お前には聖者の血が流れていたのだったな。顔つきの変わるリリン。だとしたら、まずは手始めに貴様から殺してみせよう。そして、リリンの冷たい瞳はヴラドを捉えたのだった。
リリンが放つ衝撃、あえてかわすことなく受け止めてみせたヴラド。ほう、まさか受け止めるとはな。動揺をみせることのないリリン。あぁ、それと受け止めるだけじゃないぜ。そしてヴラドが解放した左腕に宿る竜の力。これでも受けてみろって。
そんなヴラドが放った攻撃も、リリンの柔肌に傷跡を残した。僅かに眉間に皺を寄せたリリン。そうか、そういうことだったのか。そう、ヴラドにもオベロン同様に決定者の血が、かつての聖戦時に与えられた決定者ヴェルンの血が流れていたのだった。
お前たちに決定者の血が流れていようと、私に歯向かえるわけがなかろう。そう、リリンへ攻撃が通りはしても、それが致命傷になることはなかった。少しずつ、削られていくオベロンとヴラドの体力。少しは褒めてやろう。それでこそ、私の息子だと。
なぁ、なんか言い残すことはあるか。ヴラドはオベロンに問う。あぁ、いっぱいあるよ。だから、手紙にしてきたんだ。なら、丁度いい。そして、ヴラドはオベロンから手紙を受け取ると地上のデオンへと投げ飛ばした。なぁ、アイツに届けてくれるか。
あの人、怒るかな。オベロンは少しだけ不安そうだった。あぁ、怒ると思うぜ。不安なのはヴラドも同じだった。最後にもう一回、お酒でも飲みたかった。あぁ、オレも同じだ。ふたりだけに通じる会話。蘇る記憶。笑い合う魔王、妖精王、そして竜神。
オベロンが解放した神の力。ヴラドが解放した竜の力。オレさ、オマエにもうひとつだけ叶えて欲しい夢があるんだ。そして、ヴラドは竜の力でオベロンの身動きを封じた。どうして!? 動けないオベロン。ちゃんと息子のこと、抱きしめてやれよ。
どうせこの体はもう持たない。そして、ひとりリリンの許へと飛び立つヴラド。行かないでくれ!届かない声。ありがとな、親友。オレはオマエがいたから最高の夢がみれた。こうして始祖との戦いは、ひとつの覚悟と引き換えに終焉を迎えたのだった。