横たわった5匹の竜。響いたのは乾いた拍手。おめでとう、君は彼らに勝利した。だが、劣勢のはずのベオウルフの表情が曇ることはなかった。それじゃあ、三回戦を始めようか。再び起き上がる5匹の竜。どうして。彼らの痛覚を、遮断しただけさ。
何度切られようと、再び立ち上がり、リヴィアへと襲いかかる5匹の竜。ほら、逃げてばかりいたら、決着はつかないよ。ベオウルフは高みの見物。徐々に消耗されるリヴィアの体力。君はひとつのミスすら、許されないのだから。必死に足掻けばいい。
疲れを感じることのない5匹の竜と、怪我が完治してはいない1匹の竜。どちらが有利かは一目瞭然。そして、リヴィアの足を捉えたアングの刃と、腕を捉えたヘートの刃。退屈な三回戦だったけど――。直後、ベオウルフは背後に殺気を感じていた。
俺の弟を、随分と可愛がってくれたみたいじゃないか。ヒスイが振るう棍。自由を取り戻したリヴィアの体。いつも裏でこそこそしやがって、俺はオマエみたいなヤツが大嫌いだ。ヒスイはベオウルフを睨みつけた。あのときも、オマエの仕業なんだろ。
そんな古い話は忘れたよ。かつての聖戦、魔王に敗北を与えた部外者の一刺し。それに、もう過去に興味はないんだ。ベオウルフが見つめていたのは生まれ変わる世界。だが、丁度よかった。俺も狩り忘れた首があってな。それだけが心残りだったんだ。
ベオウルフの合図、ヒスイを襲う飼いならされた竜型ドライバ。そのすべてを言葉を発することなく叩き潰すヒスイ。そして一歩一歩、ベオウルフへと歩み寄る。だが、再びヒスイを襲うドライバ。そして、やはりそのすべては叩き潰されたのだった。
な、なぜなんだ。顔を歪めたベオウルフ。そして、ベオウルフに顔を近づけながら言葉を発したヒスイ。だから言ったろ、俺はオマエみたいなヤツが大嫌いなんだ。ヒスイの棍が貫いたベオウルフの体。あの世で一生、あの日のあいつらに詫び続けろ。
果てたベオウルフ。だが、まだ終わりではなかった。再び起き上がる特務竜隊。そして、研究室の各所に爆発が起きる。もう、この研究所は持たない。そして、メビウスが下した決断。どうか、私たちを守って。レプリカ:フルバーストモード、再起動。
それじゃあ、俺たちは次の戦いへ行くとしようか。ヒスイが差し出した掌はリヴィアへと。そして、リヴィアはその掌が嬉しかった。ふたりの間に多くの言葉はない。だが、リヴィアはヒスイに必要とされた。それがリヴィアは嬉しかったのだった。
先に次の戦場へと向かったヒスイとリヴィア。それじゃあ、あなたも行ってらっしゃい。そして特務竜隊を殲滅したレプリカもまた、次の戦場へ。だけど、あの姿ってまるで。そう、あの子には、彼との記憶もある。彼があの子に与えた、敗北の記憶が。