この姿、みんなには見られたくなかったんだ。ドロシーの瞳の形は変わる。ごめんね、私は嘘をついていた。私がもう一度戦うには、これ以外の方法はなかったから。馬鹿な真似をしたものね。だが、言葉とは裏腹にたじろぐ古詛竜。そう、私はもう普通の人じゃない。生死の淵から帰ってきた体には竜の血が流れていた。
画神の襲撃を退けた聖暦の天才たち。だが、すでに天才たちの戦力の大半は失われていた。それじゃあ、最後の仕上げといきましょうか。現れたベオウルフ。まずは、裏切り者の君から。飼いならされた竜が襲う堕闇卿。少し遊んであげてください。異なる竜が襲う生まれたての自律兵器。命乞いするなら、いまだけだよ。
私の相手はいないようですね。退屈そうに髭を撫でたサルバドール。そんなサルバドールの背後から聞こえた足音。皆様、いままで本当に申し訳ございませんでした。振り返ったサルバドールの瞳に映ったひとりの男。聖暦の闇才、ただいま戻りました!
懐かしい顔だ、これで退屈は満たされる。見詰め合うふたりの妖精。私は過ちを犯した。だが、こんな私でも、帰りを待ってくれている人がいた。だから今度はそんな人たちの力になりたい。大きな聖戦の中の、小さなひとつの戦いはヘンペルを変えた。
それじゃあ、さっさと裏切り者を始末しようか。未来を描き変えることの出来るサルバドール。だが、そのサルバドールはヘンペルを前に立ち尽くしていた。なぜだ、なぜ私の力が効かない。そう、サルバドールは知らなかった。ヘンペルの命の秘密を。
サルバドールへとにじり寄るヘンペルの少しはだけた胸元。光輝いていたのは義臓型ドライバ。そうか、そういうことだったのか。だが、サルバドールがヘンペルの命の秘密に気づいたときには、すでに手遅れだった。私は聖暦の天才と呼ばれたが―。
よく頭の悪い天才と言われたものだ。さらににじり寄るヘンペル。その昔、私は自らの心臓を失くした。だから私は、死者も同然。死者に未来など存在しない、描き変えることなど、出来やしないのだよ。こうして、争うことなく戦いは終わりを迎えた。
そこを、どくです。メビウスが守っていたのはレプリカに繋がれたメインコンピューター。だめだよ、それだけは出来ない。だったら、どかすだけです。パブロが振るう筆に合わせて、メビウスの真下に現れた大きな穴。逃げることは、出来ぬのです。
この子には、まだ役目があるんだから。必死に対抗するメビウス。その役目が、厄介なんです。原初の機体を元に創られたレプリカ。そして、様々な経験を経て、レプリカは偽者でありながら、オリジンを凌駕した。ここで、ぶっ壊させてもらうです。
この子を壊すというのなら、まずは私を壊してからにして。血の繋がらない魔物と機械。だが、芽生えていた親心。この子は私の大切な子供よ。子供を守ることの出来ない親なんて、親を名乗る資格はない。そして、メビウスは義耳型ドライバを外した。
もう私は怖がったりしない。イマなら、きっと聞こえるから。そう、ディバインゲートが干渉し始めた世界、メビウスの耳に届く未来の声。あなたが未来を塗り変えるのなら、私はその先の未来を聞くだけ。未来に干渉出来るのは、あなただけじゃない!
パブロが未来を塗り変え、そしてその先の未来へと動くメビウス。決着のつかないふたりの戦い。こうなったら体力勝負です。だが、そんなパブロを背後から制したヘンペル。あなたたちは、なに遊んでいるんですか。……ありがとう、お帰りなさい。