クロノスが単独で攻め入った神界。だが、すでにクロノスは刻命神により別の空間に隔離されていた。そして、それこそがクロノスの狙いでもあった。私がここに隔離された以上、あなたたちもここから出ることは出来ない。そう、互いに倒れるまでは。
私たち3人を相手に、いったいいつまで持つのかしら。ウルドが払った剣先がクロノスの頬を掠める。それは、あなたたちが3人がかりでないと、私のことを止められないのと同義ね。クロノスがみせた余裕。私は私の、止めていた刻を動かすまでよ。
隔離された刻の空間。その空間には現在、過去、未来、そのすべてが混在していた。それは即ち、世界の理から外れた空間。誰にも気づかれることのない戦い。いいさ、私は誰に観測されなくとも。そう、クロノスは自らの役割を嘆きはしなかった。
イマの世界を選択するなど、それは歩みを止めるのと同義だ。ベルダンディはその意味を誰よりも理解していた。それも、人間共に託すなど笑止千万。あぁ、私たちからしたら、彼らのイマなど、一瞬の出来事だろう。そして、クロノスは笑ってみせた。
だがな、その一瞬を彼らは生きている。私たちに頼らずとも、その一瞬の中で、よりよい未来へと歩き続けている。そんな彼らの想いを、私たちの意思で制していいのだろうか。いや、そんな権利など私たちにはないんだ。そうさ、神話の世界へ帰ろう。
私たちがいたからこそ、人間は生まれた。だから、彼らの未来を私たちが決めるのは当然のことだ。そんなウルドの言葉を否定するクロノス。それはすでに過去の話さ。そんな昔話に固執するなんて、お前らしいな。だから私たちは、変われないんだ。
私たちが決められた未来へと導く。そんなスクルドを否定するクロノス。未来には可能性があるんだ。決してひとつじゃない。力と力がぶつかり合うと同時に、想いと想いはぶつかり合う。ならば、次の一撃でどちらが正しいか、決するとでもしようか。
一列に並んだ刻命神。対して、ひとりで立ち向かうクロノス。誰も知らない、誰も気づかない空間で行われた戦い。刻命神の三つの針が重なり、現れた大きな時計の盤面にも似た魔法陣。さぁ、私たちの刻の波に飲まれるがいい。ならば私はその刻の―。
終わりを観測しよう。クロノスの周囲に現れた無数の時計。そのすべてが0時を指し示したとき、戦いは終わりを迎えた。これで、私はよかったのだ。壊れた刻の空間から空へと投げ出された4人の体。いいや、アンタだけは、まだ堕ちちゃいけない。
クロノスの体を受け止めた腕。それはグリュプスの両腕だった。だが、瞳を開けることのないクロノス。いいさ、少しだけ眠ってな、オレが連れてってやるから。さぁ、終わりを観測するんだ。アンタが観測したかった終わりは、アイツらの勝利だろ。