ミドリの目の前に広がった金色の光景、それは竜界の幸せな日常だった。世界を統べる王がいて、王を支える家臣がいて、そして普通に暮らす竜たちがいる。そう、その当たり前の光景こそが、金色に輝く幸せであり、失われてしまった時間だった。
ただ幸せな景色に心を奪われていたミドリを現実に引き戻した声。ねぇ、どうしてあなたが。そこにいたのはヴェルンだった。これが、世界の決定だなんて、粋なヤツだな。ヴェルンの口から語られる統合世界のイマ。あなたも、決定者だったんだね。
俺たちは、幾度となく世界の崩壊と再生を目の当たりにしてきた。そうなるように動いてきた。だが、今回の世界は違った。だから俺は裏切ったんだ。俺たちが間違ってたんじゃないか、って。だから、人間のオマエに問いたい。イマの世界は好きか。
そりゃね、やっぱり喧嘩もするし、争いごとだって起きるよ。でもね、そうやって私たちは生きてきた。沢山の人と出会った。みんな、一生懸命に生きていた。後悔だってするよ。でもね、その分きっと強くなれる。だから私は好きだよ、イマの世界が。
不思議だな、そんな簡単な言葉に救われるなんて。ヴェルンがこぼした本音。だが、案外そういうもんかもしんねぇな。そしてヴェルンは背中を向けた。早くそっから出て来いよ、俺様はひと足先に行ってるからな。もう、ちょっと待ってくださいよー。