ここはお遊戯会じゃないんだ。フェリスを前に、アストは槌を構えようともしなかった。私は確かに子供だよ。そして変わるフェリスの表情。だけどね、私だって騎士のひとりなの。振り上げた大きな銃斧。だから、覚悟するのはあなたの方なんだよ。
フェリスの一撃は、油断していたアストの体勢を崩すには十分だった。前言撤回だ、全力でやらせてもらう。体勢を立て直したアストが構えた鎚。ぶつかるたびに響きわたる重厚な金属音。フェリスはその小柄な体を活かし、アストを翻弄するのだった。
だが、それでもフェリスは幼い少女。乱れる息、流れる汗、もつれる足。もう止めておけ。アストが差し出す掌。オマエは十分に戦った。だが、その手を取ろうとはしないフェリス。まだ、戦える。それなら、ちょっと眠ってな。アストの拳は放たれた。
世界評議会の反対派が引き起こしたテロ事件の現場。なにが起きているのか理解が追いつかず、ただ目の前の非現実を見つめていたフェリス。自分が人質のひとりであることすら、理解出来ずにいた。そして、フェリスが捕らわれた建物で爆発が起きた。
爆発は自爆を企てたテロリストによるものだった。間一髪、建物へ飛び込んだアーサー。だが、次々と起こる爆発。どうか、この子だけは助けて下さい。アーサーにフェリスを託した両親。崩れる建物から抜け出せたのはアーサーとフェリスだけだった。
揺れる炎の中、その建物は原型を留めてはいなかった。そして、ただその炎を見つめ泣きじゃくるフェリス。そんなフェリスを優しく抱きしめたアーサー。俺があと少し早ければ。そして、そんなふたりのやりとりを、ローガンも見つめていたのだった。
フェリスを保護し引き取ることに決めたアーサー。もちろん幼い彼女を戦わせるつもりなどなかった。だが、彼女には沢山の家族ができ、みんなと一緒に戦いたいと思うのは自然なことであり、彼女の初めてのワガママをアーサーは受け入れたのだった。
おいで、ガウィ。アーサーはフェリスにもコードネームを与えていた。それは騎士のひとりでありたいという彼女の気持ちを尊重したからこそ。そして、ガウェインは大好きなパパの膝へ。最後の晩餐のときも、そこはガウェイン専用の特等席だった。