聖常王についてきたのは従者たちだけではなかった。これが償いと言うのなら、俺も共に歩もう。流れ着いたショクミョウ。そして、彼の耳に届いた意外な言葉。誰だっけ。北従者の言葉。どちら様かな。首を傾げる東従者。無言の西従者と南従者。だが、そんな彼へ、聖常王は懐かしい眼差しと共に手を差し伸べていた。
演炎奏竜トロンボが呼び出されたのは、かつての主君が鎮座していた王の間。だが、いまその場所に鎮座していたのは異なる男。俺をどう思おうと、知ったことじゃない。だが、いまここは俺のものだ。だから、俺の言うことを聞いてもらおう。乱暴でありながら、その言葉を口にした意味に、彼女は親しみを覚えていた。
真夜中に鳴り響いたのは空を斬る音。演水奏竜フルトは慌てて部屋を飛び出し、その音へと近づく。ダメですよ、まだ安静にしてないと。その音の主は、彼女の言葉に耳を傾けなかった。ただ、無心に振り下ろされる刀と、前だけを見つめる瞳。そう、流水竜はただ、前を見つめていた。遠ざかる兄へと近づけるように。
演風奏竜スネアに命じられた仕事は竜道閣の見張りだった。異常を観測次第、すぐに報告せよ。その異常がなにを指すのか、答えは伏せられたまま。だが、ごく僅かな竜王家の竜たちだけへは知らされていた。竜道閣に存在するとされる幾重にも連なった綴られし間。その間から、いまも竜界の姫が戻らないという事実を。
演光奏竜トランペが訪れたのは、文明竜たちが眠る安息の地。次第に目を覚まし始めるも、行方不明のかつての竜王へと想いを馳せるばかり。だけど、私は思うんです。きっと、かつての竜王さまなら、後任に紅煉帝を指名したんじゃないか、って。求めたのは自分にない力。だから、私は少しだけ安心しているんです。
演闇奏竜サクスが興味深く眺めていたのは、人工、次種族、混種族の異なる五匹の竜たちだった。聖常王の登場により、変わった世界評議会の体制。新しい王様は、いったい彼らをどうするつもりなんだろう。そして、その裏で糸を引く、竜を殺さんとする屠竜者を。うーん、やっぱり仕事は盛り沢山みたいですね。
演無奏竜グロックが同伴したのは秘密裏に行われた会合。よく来てくれた。それは世界評議会の本部からは遠く離れた小さな小屋だった。俺を持て成すには、随分と寂しい場所じゃないか。だがまぁ、たまには悪くはないな。向かい合った聖常王と紅煉帝。先に言っておく。俺に指図はするな。それが互いの為ってやつだ。