その日、事件は起きた。なんと、修復中も不動間から出なかった炎杖刀が、その場所から姿を消したのだ。だが、なぜ姿を消したのか。それは彼によく似た少女の行動を見れば一目瞭然だった。彼に似たジャージに、彼に似たゴーグル。そして、彼に似た杖刀型ドライバ。そう、ヒナギクが彼を探し回っていたからだった。
えっ、ウチは妹なんかじゃないですよ。火杖刀ヒナギクは語る。小さな頃、命を助けてもらったんです。それで、あの方のように強くなりたくて。あの方は、礼も聞かずに去ってしまいました。そして噂を辿り、入学を果たした精霊士官学校。だが、炎杖刀の活躍など、彼をよく知るもの以外、信じるわけもなかった。
あの日、自らに架した枷。この翼は、空を飛ぶ為ではなく、皆を運ぶ為に使うと。レオンが皆を運びたい先は、家族が寄り添いあっていた、あたたかな日々。だが、レオンは前を見つめていた。過去にすがるのではなく、もう一度、あの日々を求めて。