マハザエルが目を覚ましたとき、それまでの記憶は存在していなかった。だが、それでも二重螺旋に刻まれていた存在理由。それは真教祖の為に生き、そして死ぬこと。そして、前北魔王の首を狩ること。なんだ、そんな簡単なことなのか。聖戦後の統合世界にて、再び、とある教団は動き出そうとしていたのだった。
これで、四つ目の柱も揃いました。執事竜が迎えたのは北魔王マハザエル。完全になれなかった彼らと違い、彼らは完全なる存在となることでしょう。そうだね、彼らは不完全だったんだ、二度と顔も見たくないよ。紅茶を舐めながら、真教祖が下した命令。それじゃあ、手始めに抹殺してもらえるかな、ひとり残らずね。
僕は人形。ドロッセルは、ただ、雪降る街で記録をし続けるだけの存在だった。いつから存在していたのか。いつから体が与えられたのか。そう、体などは器に過ぎない。だから、僕は人形なんです。そんな彼に与えられた命令。ちょっと、くるみを割ってきてもらえるかな。それは無聖人の一声。そう、僕はただの人形。
運命を必然と呼ぶのであれば、ふたりの出会いは運命であり、そして必然だった。どうして出会えたのか、どうして出会ってしまったのか、どうして出会わされてしまったのか。無雪徒ドロッセルはただ記録を続ける。雪降る夜に出会えたふたりを。雪降る夜に出会わされてしまったふたりを。すべては、無聖人の掌に。
体を切り裂く爪もあれば、かじられる爪、磨かれる爪も存在する。そして、ただ見つめられるだけの爪も存在していた。その見つめられた爪が意味するのは、刹那の切なさ。だが、その感情を理解する心など、彼には残されていなかったのだった。