こうして、かつての聖戦は始まった。止まることのない魔界の侵攻。散りゆく天界の者達。だが、天界を統べる王であるオベロンに、立ち止まることは許されなかった。いくら大切な家族が散ろうとも、王は涙を流すことは許されなかったのだった。
互いに理想を語り合っていたふたり。ヒスイは、そんなふたりを見守るのが好きだった。だが、そんなふたりが始めてしまった争い。俺がもっと、力を持っていたら。なぁ、俺にはなにが出来るんだよ。その時、ヒスイは自分の無力さを知るのだった。
止まることは許さない。ヴラドが奪うのはオベロンの大切な家族達。その先により良い未来が訪れると信じ、自らの手を汚す覚悟を決めていた。決めていたはずだった。だが、ヴラドが奪っていたのはオベロンの家族だけではなく、自らの心だった。
このままでは美宮殿は制圧されます。続く篭城戦。散りゆく大切な家族。もういい、もう戦わないでくれ。それでも世界の為に散りゆく家族達。もういいんだ。この時、オベロンは初めて王の涙を流し、そして神へと懇願する。「戦う力」が欲しい、と。
美宮殿に舞い降りた一筋の光。直後、圧倒していたはずの魔界の軍勢の半数以上が消滅した。いったい、なにが起きたんだよ。ヒスイはその答えを知る為に、美宮殿へと急ぐ。だが、そこで目にしたのは、闇へと堕ちた堕精王オベロンの姿だった。
禁忌の力を得たオベロンの力を前に、ただ立ち尽くすことしか出来ないヴラドの元に現れた一匹の竜。そして、竜は問う。力が欲しいか、と。そして、ヴラドはオベロンの力の前に散った魔界の軍勢を見渡しながらこう答えた。「守る力」が欲しい、と。