なんで、どうして。在りし日のカナンを責め続けた理解し難い感情。天界と魔界の争いが激化するなか、一匹の竜が姿を消した。どうして、なにも言わずに消えてしまったの。残ったのは、幼き日にもらったバラの髪飾り。そんな彼女に、竜王は告げる。彼は私達を裏切った。だからもう、そんな物は捨ててしまいなさい。
誰もいなくなってしまいましたわ。シャルラは空っぽになった会議室で、誰かに話しかけていた。これも、全部計画通りなのかしら。返ってくることのない返事から察した肯定の意。もぉ、たまには話相手になって下さいませ。あれだけ、茶番に付き合ってたあなたじゃありませんか。そして一人、ほくそ笑むのだった。
私達を集めていったいどうするつもりかしら。誰もいなくなった会議室に、続々と集まる者達。水凛徒シャルラと特別監視役、特別調停役。そして、悪戯神に寄り添うように立つ愚者。今日は君達に、改めて紹介したい人がいるんだ。ほら、入って来てよ。その声にあわせて姿を現したのは、誰かによく似た無聖人だった。
少女は幼いながらに、変えることの出来ない運命を理解した。そして、少女は運命を恨み、運命を否定した。血筋に支配されることなく、何者でもない自分でありたいと願う。だからこそ、少女は燃え盛る真紅の炎を捨てる道を歩き始めたのだった。