少年は理解していた。両親の歪んだ愛を。自ら選んだ出来損ないの道。だが、少年の心はその状況に耐えることなど出来るわけもなかった。噛み締める唇。だけど、これで弟は救われる。だが、すれ違う想い。弟が罪を犯したとき、少年は弟の名前であるアオトを名乗ったのだった。これは、僕が背負うべき罪なんだから。
あの三人がどこへ消えたかはわからない。それは闇通者の言葉。どうせもう、彼らは必要ないのよ。それは無通者の言葉。私達の教祖様は、この方一人だけなのだから。その隣り、真教祖は不敵に微笑んでいた。次は君にお願いすることにしたよ。そして、名もなき青年にはエギュンの名前と役割が与えられたのだった。
あの日、二人の西魔王が消えた。でもね、だったら何度でも創ればいいだけの話だから。新たに創られた西魔王エギュン。そこには、壊滅したはずのグリモア教団員が集められていた。だけど、これで良かったのかもしれないね。少しだけ準備を整えよう、そして僕達の手で再創するんだよ、このちっぽけな世界をね。
彼が生まれるまでに、多くの存在が血の涙を流した。これは必要な犠牲だ。世界評議会で研究されていた次種族<セカンド>の可能性。俺の奏でる未来に、君が必要だっただけだ。そして口を開いたグライフは、冷たい視線を投げ返した。彼と一緒にされたら困るよ、あんな出来損ないの天上の獣にね。俺達は共犯者だ。
俺の代わりに働いてもらおうか。そして天神獣グライフに与えられた三つの役割。一つ、王の象徴であること。二つ、神の翼になること。三つ、黄金を守ること。で、優先度を聞かせてもらおうか。もちろん二択で構わない。その問いに、表情一つ崩さない炎聖人はこう答えた。王都へ向かえ。彼がまだ、王であるうちに。
両親は死んだ。だから僕は僕であることを辞めた。僕は君だよ。だから、君は悪くないんだ。悪いのは全部僕なんだ。殺したのも、僕なんだよ。そして少年は親殺しの罪を背負った。すべては弟の為に。だって僕は、あの夜に守ることを誓ったんだから。
その瞳が濁っていたのは、悲しいから、苦しいから、辛いから。なぜ、私がこの役目を。創られた神格、だがそれこそが存在理由。ありがたく思って欲しいんだけど。力を与えられた責任を果たしてよね。そこには一方的な取引が存在していた。
テロ鎮圧の為、評議会は人質を犠牲にしようとしていた。悲劇を繰り返すのか。民間軍事会社の天涯孤独の男はその決定を受け入れられなかった。そこに現れた評議会の青年。好きにやれよ、始末書なら俺が書いてやる。それは四人目の出会いだった。
火の海に消えた家族旅行。泣き叫ぶ一人の少女。あと少し早かったら、少女は幸せな日々を過ごしていただろう。だが、世界は優しくなかった。これは全て俺の責任だ。だから、新しい始まりを贈らさせてもらえないか。それは五人目の出会いだった。