なぁ、ここはどこなんだ。目を覚ました第六世代自律型ドライバ【ルル】は神才へ問いかける。そういえば名前なんて気にしたこともなかったよ。そこで初めて神才はこの場所に興味を抱いた。ねぇ、ここはどこなのかな。そして、悪戯な神はこう答えた。ここはね、彼の為の、彼の為だけの王都ティンタジェルだよ。
ここが王都だとしたら、どうして民は一人もいないのかな。どうして王様しかいないのかな。その答えは簡単だった。もうすぐ、多くの民が集まってくるんだよ、一人ぼっちの王様の元にね。そっか、それはとっても楽しいことになりそうだね。そして神才は鼻歌を口ずさんだ。ルールルー、ラールラー、レーロッロロー。
やっぱり双子は萌えポイント高いよね。妖精と魔物だなんて、もう、たまらないよ。こうして第六世代自律型ドライバ【リリ】は神才の手により生まれた。私のことはね、お母さんって呼んでくれていいよ。ママでもいいかな。そして初めて開かれた口。了解ですよ、マスター。その一言に、神才は深く傷ついたのだった。
リーリリー、ラールラー、レーロッロロー。早速ね、君達にお仕事を頼みたいな。プログラムされた二人の堕ちた天才の名前。マスター、あと二人いるみたいですよ。なぜかプログラムされなかった二人の天才の名前。一人はね、もうすぐここに来ると思うんだ。もう一人はね、様子を見たいんだ。神才は楽しそうだった。
どういうおつもりでしょうか、お兄様。問いかけるシオン。それは長時間にわたり行われた竜王族会議のあとの出来事。賛成票は過半数を超えていました。なのに、どうして。埋まらなかった王の席。言ったろ、俺は好きにやらせてもらうって。お兄様は、竜界の平和ではなく、ご友人達を選ぶということなのでしょうか。
過ぎ去りし昨日に何を求めるのか。傷跡を癒す思い出だろうか、傷跡を抉る思い出だろうか。もう、あの頃は戻って来ないっていうのに。闇聖人シオンの心は晴れなかった。そう、だっていくらお兄様たちが頑張ったって、世界の決定は覆らないんだから。その日、六聖人の間では、一つの大きな決断が下されていた。
女王の間へと届けられた沢山の稟議書類。あ、あの、ハンコをお願い出来ますでしょうか。だが、その呼びかけに応える者はいなかった。それは、スピカの声が小さかったからなのか、あえて聞こえないふりをしていたのか。闇魔女王は窓辺から夜空を見つめ続けていた。女王様は、お星様のことがお好きなのでしょうか。
星屑魔スピカは夜空を眺める闇魔女王の為に紅茶を用意した。ほのかに漂うオレンジの香りに、顔をゆがめる闇魔女王。お口に合いませんでしたでしょうか。だが、首は左右に振られた。ねぇ、あなたはどちらだと思う。開かれた唇。星が光り輝く為に、夜は闇を纏うのか、それとも闇を纏う夜の為に、星は光り輝くのか。
報告を終え、自室へと戻ったファティマの元へと訪れた来客者。それで、世界はどのような決断を下したのかしら。僕が前から話してるとおりだよ。それはあなたにとって、つまらない世界よね。その一言は、世界の決断を鈍らすのに十分なものだった。
随分と派手に暴れたのね。ヴィヴィアンは数多の戦いで傷ついた体の手当てをしていた。それで、目的は果たせたのかな。知ってるくせに、なに言ってんだよ。その言葉の出所は、ヴィヴィアンの膝の上だった。っつか、ベッドに寝かせてくんねーかな。
人が空を見上げるのは、お星様に願い事をする為だそうですよ。それは幼き日の記憶に残る絵本の話。星が光り輝くのは、みんなを笑顔にする為だそうです。そう、その言葉は、いつもきらきらな笑顔の少女を思い出させるには十分過ぎたのだった。