なぜ、そんなに悲しい瞳をしているんだい。教団本部の研究室、堕風才に問いかけたのは執事竜だった。君らしくないじゃない。だが、一向に返事はなかった。黙っていたって、わからないよ。そして、ようやく返ってきた返答。私にその女を受け入れろと言いたいのね。黙って頷くそのすぐ横に、サマエルは立っていた。
これはね、僕と君との秘密の約束だよ。だが、頷かない堕風才。だったら、君の居場所はないよ。それは約束ではなく、一方的な脅迫。東魔王サマエル、彼女こそ四大魔王に相応しい。悲しい瞳は、深みを増した。翼をもがれ、手足まで縛られる気分はどうだい。それでも、堕風才は悲しい笑顔を浮かべていた。けひひ。
物騒なもん、持ち出してんなよ。竜神が会いに向ったのは、刀型ドライバ【リヴァイアサン】を手にしたリヴィアだった。この力は、僕が授かったものだから。怒りの矛先は、神々の悪戯へ。だったら、どうするんだ。閉ざした瞳、微かな沈黙。僕が、斬り捨てるだけだよ。竜界でもまた、何かが動き出そうとしていた。
古竜衆の一人、流水竜リヴィアは刀に閉じ込められた力を解放しようとしていた。彼らが竜を刃に変えるなら、僕は刃を竜へと変える。竜でありながら、竜を従えた青年は、取り残された上位なる世界を見つめていた。だったら、お前はどっちにつくんだ。どっちでもいいよ、僕は彼を斬れるのなら、それだけでいいから。
神にも休息は必要と、サナエの元に届けられた荷物。あんたも色々大変みたいだな。そんな声をかけていたのは刻を廻る配達人。あっ、どうもありがとう。毎度あり。差出人不明の贈り物、中にはマジカルミライ2015の初音ミクの衣装が。誰からかな。だが彼女はすぐに考えることを止めた。可愛いは、正義だよね。
綴られた存在が自身の人生を謳歌するには二つの道しか許されなかった。台本通り、物語通りに演じきり、そして終わりを迎えるか。それとも、その運命に抗い、禁忌を犯し、永遠の苦しみを受け入れるか。どちらにせよ、幸せな結末は選べなかった。
神と竜が争っていたのは遥か昔、まさに神話の時代と呼ばれた時代だった。共に優れた知能、文明、そして力を持った異なる種族だからこそ、起きてしまった争い。どちらが優れているか、など、そんな答えを求めた者は、どこにも存在していなかった。
私達に、居場所なんてなかった。歪な平和が生んだ犠牲。だから私達は、居場所を求めた。妖精の涙をさらう風。やがて見つけた居場所。なんで、私達なのかな。誰も教えてはくれなかった。そんな居場所さえ、新しい風はさらおうとしていたのだった。