可愛い子には、旅をさせよ。それは、古来より極東国に伝わることわざ。大丈夫、あの子はもう、ひとりで歩けるから。【クズノハ・カムイ】を手にした神威狐イナリは、千本鳥居を歩き出す。暖かな想いを、背中に感じながら。彼女が向かう先に待つのは、神であり、神ではない存在。それじゃあ、神を冒涜してくるね。
与えられた衣食住、そこに不満はなかった。だが、いつまでも満たされない心。なんでだにゃん。秘書猫トキワの瞳に映るのは、慌ただしい毎日と、煮え切らない誰かの横顔。そっか、わかったにゃん。だから、彼は少年に寄り添った。そして、探り始める世界評議会に隠された真実。別に、誰かのためじゃないにゃん。