聖王代理を務めるミレンは、一部の隊員を鞘の奪還へ、一部の隊員を帰らぬ王の奪還へと向かわせた。仕事後の執務室、指でなぞったのは溶け出した氷。全員で、迎えたいのに。こぼした溜息。もし、あの子の言葉が本当ならば。彼女が気にしていたのは、隊服を脱ぎ捨てた一人の女の言葉だった。世界は、彼を許さない。
リオは淡々と話し始めた。温かい世界、それは彼にだけ冷たい世界。優しい世界、それは彼にだけ厳しい世界。肯定される世界、それは彼だけが否定される世界。信じられる世界、それは彼だけが裏切られる世界。だから私は、彼を殺す。生きていてはいけない。私は、彼の、あなた達の敵。それが、彼の為の世界だから。