友達なんていらないよ。少女は変わりたくて夜の街へと逃げ込んだ。この喧騒とネオンは私に優しいのね。そこでは一人じゃなかった。そうよ、私は夜の蝶になるの。だったら、思う存分、甘い蜜を吸わせてあげようじゃないか。甘い誘いを求めた少女の存在は世界から消え、そしてクロンという少女が生まれたのだった。
愛想笑いが心地良いわ。ほら、みんなもっと笑って、笑って。ここに理性は必要ないわ。甘い、甘い、そんな蜜を、いつまでも吸い続けることが出来るのだから。私は、蝶になったの。それは偽風精クロンの望んでいた結果だった。ありがとう、私のことを変えてくれて。礼には及ばないよ。これが、正しい道なんだから。
人は、いつまでも変わらずにいることは難しい。だけど、簡単に変わることも出来ない。だからこそ、自分を簡単に変えることが出来る、そんな魔法の薬があるのならば求めてしまう人がいるのもまた事実。需要と供給、それは幸せな取引だったのだ。
鍛練を怠らないのは、守りたいものがあるから。では、鍛練をしない人は、守りたいものがないのだろうか。決して、そんなことはなかった。ただ、自分の体を犠牲にすることでしか、愛情を表現することの出来ない不器用な存在がイージスだったのだ。