久しぶりね。囚われた永久竜の元に顔を出したのはイヴァンだった。いくら信じてもね、王と、その道化に活路は見出せないわ。統合世界に加わり、神界との均衡が崩れた竜界と、その地に生きる者はみな、上位なる存在ではなくなっていた。王の証を失くした竜王じゃ、きっとこの世界を変えることは出来ないわ。
そろそろ時間が来たようね。雷帝竜イヴァンを呼びに来た教団員が伝えたのは、とある鞘が届けられたという知らせ。教祖は象徴でしかなく、それはとても脆い存在よ。そう、王も所詮、象徴でしかないの。込められた皮肉。だが、永久竜が動じることはなかった。私は信じている、彼が持つ、もう一つの意味と可能性を。
ひたすら実験を繰り返していたヨハン。どうしてだろう、どうしたって、世界は終わっちゃうみたいだ。繰り返し導き出されるのは、微かなズレもない、完全な答え。どうしよっかな、どうするのがいいかな。それはとても楽しそうに見えた。あなたには、働いてもらわないと困るのよ。でも僕ね、面倒ごとは嫌いなんだ。
困ったな、どうしよう。水聖人であるヨハンを困らせるほどの問題とは。パンを食べたら、お米が食べられない。でも、お米を食べたら、パンが食べられない。だが暫くして、新しい可能性を見出した。そっか、お米パンを作れば良いんだ。そんな子供じみたやり取りは次種族<セカンド>の命運を握っていたのだった。
もぉ、アイツったら相変らず乱暴にゃん。せっかくこの僕がお手伝いをしてあげているって言うのに。給料も良いはずなんだから、僕に高級な鰹節よこせにゃん。でもアイツ、時折寂しそうにしているにゃん。仕方ないから、ずっと傍にいてやるにゃん。
邂逅を果たした竜と竜。同じ世界で生まれた二人を遮ったのは鉄格子。どちらが外でどちらが内か、それは状況を見れば一目瞭然。だが、果たしてそれは真実だろうか。見方を変えれば、世界は変わる。二人を遮ったのは、固定観念でしかなかった。