水とは何か。その答えを渇望した少女は、幾つもの実験の果て、水のみを動力とする機体を創り出した。ケルビンと名付けられたその機体は、世界の気候を狂わせる程の性能を持ちながらも、戦争の表舞台に現れることは無かった。全ての水が、やがて海へと還る様に、この機体もまた、深い海の底へと沈んでいった。
あらゆる生命に満ち溢れた海の一角が、一夜にして死の氷海と化した。その現象を、人々は聖なる扉の出現に伴う異常気象と結論付けていた。全ての生物が活動を停止した静かな海の中で、水冷機ケルビンだけが優雅に泳いでいる。何故、再び彼女が目覚めたのか。それは、創造主のただの気まぐれだろうか。それとも。
水は空から降り、地を流れ、海へと還り、また空へ昇る。生命もまた、生と死を巡るもの。この近似性から立てられた仮説。検証の為に創られた機体は海の底で活動を停止した。それは失敗だったのか、知っていたのは神と呼ばれた天才ただ一人だった。
闇魔将は水魔将と共に闇魔女王の警護にあたっていた。私達の世界を作る為ね。自分達の閉じた世界を作る為、彼女は刀を構える。閉じた世界で、永遠に愛し合う為に。くだらない戦争が、私達の二人だけの時間を奪っていくのね。姉の手を握り締めた。