ひとり縁側、筆型ドライバ【キサラギ】で退屈そうに空に描く独り言。ウメは一人の少年を待っていた。きっとあなたの元を訪れるはず、そう伝え聞いていた少年を。何故だろう、嫌な胸騒ぎがする。ひゅるる、頬を撫でたのは少し冷たい風。夕日は沈み、昇ったお月様。いつまで経っても、絶無の少年は現われなかった。
いつまでも訪れない少年の代わりに、葉音一つ聞こえない静寂が訪れていた。少年の身に、何かが。敷き布団に横になったのは、嫌な予感を眠らせる為。目を閉じた矢先、微かに聞こえた足跡。一気に近づく足音。慌て飛び起き外に出ると、そこには、息を切らした一匹の猫が。僕が、アイツの代わりに、戦うにゃん。
もし、向かい風が吹いたら、少し考え方を変えてみよう。もし、追い風が吹いたら、後ろを振り返るのを止めよう。そんな教えが風の庭園には伝わっていた。流されることは、決して悪いことじゃないんだ、と。そんな庭園で吹くのは、どちらの風か。
あの人がいつも話してくれた彼のこと、少しは守ることが出来たかな。元気で、明るくて、やんちゃで、それでいて友達思い、全部話してくれた通りだったよ。きっと僕は、あの人がいてくれたから、今も生きていられたんだ。優しさを、ありがとう。