黄昏の審判が差し迫る中、辿り着くことが出来たいつかの炎、そう、自らを救った優しい暖かな炎。炎の聖地での、炎の起源との再会がもたらした新たな共鳴<リンク>により、更なる炎を灯したニャオ・ヒーは、自らの命のお礼にと、その灯した温かな炎と共に、開かれた扉へ、審判の日へ炎の起源の為に走り出した。
至高の一品を求めて、越え続けた荒波の果てに辿りついたのは水の聖地、竜宮郷<ニライカナイ>。偶然にも訪れていた水の起源との共鳴<リンク>がもたらした進化。それでもグルメな猫が示す興味は美味へだけ。だけど、偶然にも手にした力は海の幸を得るには好都合。ニャオ・スィーは再び美味を求めて東の海へ。
吹きすさぶ風に煽られて、気が付けば空高く。そして突如派生した竜巻に飲み込まれた体、失くした意識を取り戻したのは蓬莱郷<ホウライ>。風の起源による愛弟子へと向けた愛の鞭に巻き込まれ、そして保護を受けた風の猫が果たした進化。元気を取り戻したニャオ・フーは再び、ふわふわりと、空へと飛んでいった。
幸せを蓄えた光の猫は審判の日を前に、連れ戻された永遠郷<シャングリラ>で光精王との共鳴<リンク>により新たな姿、ニャオ・ピーへと。更にたくましくなったその体を抱きしめ、笑顔を浮かべる少女がひとり。ふてぶてしい表情さえも、愛らしいと思えるのは、それが人々の幸せの形だからなのかもしれない。
終わらない夜の世界、叶わなかった小さな願いに、拒絶された世界に、悲しみに打ちひしがれていた。そんな失意の闇の猫を優しく抱きしめるか細い腕。それは身に覚えのある温かさ、そう、初めて触れられた時に感じた優しさの温度。愛した夜の眠りから覚めた少女の腕の中、ニャオ・ミーは安らかな寝息を立てた。
意味もなく歩き続け、そして迷い込んだ地底郷<アガルタ>。遭遇した無と無の強い共鳴<リンク>、そして巻き込まれた無の猫は新たな姿、ニャオ・ムーへ。偶然居合わせたことに意味などは無く、だけどその意味の無いことの意味を、強すぎた共鳴から感じた無の猫は、1匹、開かれた扉へと意味ありげに歩き始めた。
道化の魔法使いは、一体何の為に六体のドラゴンを呼び出したのだろうか。また、何の為に刃へと姿を変えさせたのだろうか。そして、その刃を手にするのはいったい、誰なのだろうか。その全ては「魔法」という都合のいい言葉に隠されていた。
一度は落としかけた命、それを助けたのは炎の起源だった。ずっと、探していた出会い。炎の共鳴<リンク>により成長した炎の猫は、微力ながらも、聖なる炎へと通じる道を探すのであった。小さな猫の恩返しは、大きな希望へと変わり始めた。
あの日向けられた氷の刃、その時感じた冷たさは、寂しさ故の冷たさ。ジェットコースターの待ち時間、フードコートでのお昼のひと時、腕を組んだ後ろ姿。その全てが眩しく見えた。そして、恋乙女は凍てついた彼と描きたい暖かな未来を重ねていた。
なぜ人は偽るのか。なぜ人は演じるのか。きっとそれは、弱い自分を隠したいから。許されたいから。それは古の竜も同じ。彼はいつも、踊ってみせた。誰かの手のひらで、踊ってみせた。踊ることしか出来ない彼は、踊らない彼のことが嫌いだった。
出来損ないの魔法使いに、居場所なんてなかった。だから、そんな魔法使いは居場所を求めた。家族という温もりを感じたかった。ただ、それだけだった。暖かさの炎に包まれ、復讐の炎を燃やす一人の道化竜、少し歪んでしまった、道化竜がいた。
成長した水の刃は、目の前に存在する全てを突き刺そうとしていた。鋭さを増した水は、刃となり、全てを突き刺す。そう、それが自らが統合世界に存在する理由だと言わんばかりに。刃と化すその水は、留まるのか、流されるのか、それともまた。
成長した水の猫の頭には、美味しい食べ物のことしかなかった。だけど、それは正常なこと。生きる為には食事をし、そして食事をするのであれば、美味しいに越したことはない。食いしん坊の猫は、売店のハワイアンソフトクリームに興味津々だった。
彼と一緒に、来たかったな、そんな想いを巡らせていたのは癒乙女。少し長いはずの丈、少し背伸びをした背中が大きく見えたのは、きっと、誓いを果たしたから。だけど、その背中に感じた不吉な予感は、彼女の知らない場所で現実として訪れていた。
浅い眠りの中、よく見る夢があった。そこは綺麗で平和な世界。だけど、なぜか自分だけはその世界からはみ出していた。なんでこんなに平和な世界なのに、自分の居場所はないのだろうか。目が覚めると、いつもの暖かな腕の中、その夢は忘れていた。
噛み付こうと思えばいつでも噛み付けた。引っ掻こうと思えばいつでも引っ掻けた。逃げ出そうと思えばいつでも逃げ出せた。だけど、それでも主人の傍にいたのは、外された手袋だけじゃなく、時折見せる寂しそうな笑顔があったからだった。
そこには、ずっと探していた宿り木があった。そして、風の竜は刃へと姿を変える。解放せし者が握り、そして空へと捧げた贈り物。舞い降りた光と共に起きた竜巻は、空高く昇り続けていた。まるで、空の上から世界を見下ろす神へと変わるかの様に。
偶然にも巻き込まれた竜巻は、風の猫と共鳴<リンク>した。いくら向かい風が吹こうとも、いくら追い風が吹こうとも、自らの雲に乗り漂う猫は、のんびりと空中散歩を楽しんでいた。次はあの飛行機雲を目指そうか、興味の対象はいつも雲だった。
少女は、お姫様に憧れていた。いつかきっと、白馬の王子様が迎えに来てくれる。自分はピンクのレースのドレスに身を包むんだ。そんな恋に恋する森乙女は一人、回転木馬に跨り、瞳を開けた夢を夢見ていた。そう、それはあくまでも、夢だった。
案山子に心などなかった。あるとしたら、使い捨てられた荒んだ心。だけど、そんな心に差し込んだ一筋の光。それは、あぁ、今日は風が喜んでいる、などという訳のわからない供述ではなく、くたびれた手を握ってくれた、一人の魔法使いだった。
蔦の様に固く絡まった想いは、使い古された自分を必要としてくれた魔法使いへと捧げられた。勘違いしないで下さい、僕は君を使う訳じゃない、家族として迎え入れるだけですよ。それは、ずっと一人だった彼に、初めて家族が出来た瞬間だった。
何故、誰も気がつかなかったのだろうか。光の竜に、神の持つ槍の名が与えられている意味に。全て初めから、約束されていた未来。解放された力、刃へと、本来の姿へと変わる光の竜を手にする者、脅えていたのは歪な平和に彩られた天界だった。
幸せの光猫は永遠郷<シャングリラ>に位置する光の浴室で、光の祝福に包まれていた。それは光の共鳴<リンク>の果てに。偶然浴室に居合わせた天界の歌姫と光の美女に挟まれ、少し頬を赤く染めながらも、満足そうな笑みを浮かべる光猫だった。
あの時のクレープ、美味しかったな。思い出すのは息抜きの日の出来事。賑わう遊園地、だけど何故か寂しかった。それは、天界の歪な平和の片鱗を知り、そして、未だ伝えられない想い人が遠くへ行ってしまいそうな、そんな気がしていたからだった。
百獣の王であれ、檻に閉じ込められてしまっては手も足も出せなかった。ただ人前に出され、そして観客を喜ばせる。そこには沢山の笑顔が溢れていた。だけど、そんな客席に、一人だけ、寂しい顔をした魔法使いがいたことを、ずっと覚えていた。
欲しかった翼、広がる空、それでも魔法使いの傍にいた一匹の獣。それは、夜空に散りばめられた、申し訳程度に光る星屑よりも、魔法使いの魔法の方が輝いて見えたから。そして、きっと、自分のことを信じ、翼を与えてくれたと思えたからだった。
闇の竜、それは必ず誰かを死に至らしめる上位なる世界に存在していた呪われし剣の名前を冠していた。既に剥かれていた牙、抜かれてしまった刃、復讐に燃える魔法使い、浮かべた憎たらしい笑顔、既に「魔法」では片付けられない状況となっていた。
再び堕ちた猫を救い上げたのは、あの日出会った安らぎだった。あなたのことを、もう、一人にはさせないわ。一人でいることを好んだ少女に傍にいることを願われた闇の猫は再び寄り添い、そして二人きりの優しい夜の果て、眠りに落ちたのだった。
妖精でありながら、魔界で生まれた悪乙女が求めていたのは、歪な平和ではなく、正常な混沌だった。そう、いつまでも終わらない悪夢の行進こそが、規則正しく放たれる輝きよりも美しく見えたから。それこそが、正常であると認識したからだった。
いつか二人で、一等賞になろうね。そう遠くない日の約束、忘れるはずのない約束、だけど少女は、サヨナラを告げた。女同士の友情、嫉妬、そして表裏一体の憎しみと愛。全て、忘れることが出来たなら。それは、願ってもいないはずの、願いだった。
あとどれくらい走ればいいんだろう。どうすれば、忘れることが出来るんだろう。履きつぶれた靴、すりむいた膝、そんな彼女の目の前に置かれた白い靴。なぜ彼について行ったかを思い返して辿り着いた答え。私より、寂しそうに笑うからだった、と。
統合された三つの世界に向けたられた悪しき三つの願い。そう、統合世界を形成する三つの世界全てに悪しき願いは向けられていた。刃と化した無の竜は、全てを無に帰し、そして、新たな世界へと再創<リメイク>せんとしているかの様だった。
この世界全てに、意味は有るのか。いや、意味の無いものも存在はしているだろう。無の猫に存在理由などは無く、そして誰かに必要ともされず、そして不必要ともされなかった。もしかしたらその様な存在は、本当は存在していないのかもしれない。
ふわふわ、ふわふわわ。ふわふわ、ふわふわり。ふわふわ、ふわふわわ。ふわふわ、ふわふわり。ふわふわ、ふわふわ。ふわふわ、ふわふわ。ふわふわ、ふわふわ。ふわふわ、ふわふわわ。ふわふわ、ふわふわ。ふわふわ、手にした綿菓子に夢中だった。
機械はいつか壊れ、そして捨てられる。それは自立型ドライバも同じ。切れた油、止まった鼓動。だけど、魔法使いは放ってはおけなかった。まるで、いつかの居場所を無くした自分を見ているようだったから。そして、自分の居場所を求めていたから。
魔法使いにより施された塗装、道化嬢により飾られた装飾、それは新しく迎え入れた家族への愛情表現。そう、居場所を無くした皆は寄り添い、そして、一つの家族になった。不器用が故に、素直に気持ちを伝えられない、だけど暖かな家族だった。
この翼は、空を飛ぶ為ではなく、皆を運ぶ為に使おう。そう、百獣の王は既に、欲しかった輝きは手に入れていた。後はこのまま、ずっとみんなと一緒に暮らせればそれでいい。その為にも、戦う。そう、守りたいものは、人それぞれに、存在していた。
外敵から身を挺して家族を守る、そこに言葉はなく、ただ行動のみが存在していた。そう、言葉などなくても、家族は絆で結ばれている。なのに何故、同族同士で、言葉も通じるのに、争い続けるのだろうか。案山子には理解することは出来なかった。
朝方、目が覚めるとそこにはいつもの腕がなかった。まどろみの中、探した温もり。だけど、見つけたのは空を見つめる寂しげな笑顔だった。起こしちゃいましたか、さぁ、もう一度寝ますよ。いつまでも、この人の傍にいよう、そう思った朝だった。
新しい自分になりたかった。でも、いつまでも忘れることの出来なかった昨日。人は簡単に忘れられない生き物です。そう言いながら魔法使いは隣に腰をかけた。家族には弱みを隠さなくてもいいんですよ。少女の頬を伝ったのは、一筋の涙だった。
僕が裏切ったんじゃありません、世界が僕を、僕達を裏切ったんです。そして続く言葉。だからこんな世界、再創<リメイク>すればいいんです。新しい世界を、再び創るのです。そう、魔法使いが口にした言葉は、黄昏の審判の答えを意味していた。