磁とは何か。それは異なるものが引き合い、同種のものが退け合う力。生と死は異なる事象であり、きっと引かれ合う。さて、その二つが一つになる位まで近付いた時、その中心には一体何があるのだろうか。少女は確証を得る為に一体の機械を創り出した。長く続いた戦争の中心で、テスラはずっと記録し続けていた。
出会う筈の無かった異なる世界に住まう異なる種族。偶然の出会いに引かれ合い、やがて近付き過ぎた両者は反発し合う。小さな反発はやがて大きな反発へ。そして今もまた、世界のバランスは崩れ、生と死が引かれ合う戦争が始まろうとしていた。闇磁機テスラもまた、再び動き出す。少女が求める答えを記録する為に。
生と死は近づいたり離れたり、何度も繰り返されてきた。そこに意味は有るのだろうか。未だ答えは見付からない。もし意味が有るのなら、多くの犠牲にも大義があったと言えるだろうか。その答えが見付かるまで、観察は続けられる。そう、何度でも。
未だ各世界の自由移動は解禁されないまま、時間だけが過ぎていく。だが、それでもラスティはとあるルートを経て、常界へと降り立っていた。おさまることのない二次災害。どうして。聖戦は終結したはずなのに。そして、もうひとつの新たな疑問が生まれていた。なぜ、被害は最小限で食い止められているのかしら。
世界を統べる者が不在の常界はいま、世界評議会に残った有志たちにより運営されていた。だからといって、こんなに上手くいくわけはない。水砕卿ラスティが辿る違和感の足跡。これ以上は、知らないほうが身のためですわよ。滴り落ちた雫。あなたは、いったい誰に仕えているのかしら。いまも昔も、変わりませんわ。
天界の深い森がかき消したのは、中に建てられた小さな小屋の扉を叩く音。やっぱり、来るんじゃないかと思ったよ。ニミュエが出迎えたのは、俯いた精参謀長。私はあなたの動きを知ってた。だけど、止めることは出来なかった。そう、彼女達を追放したときのように。だから、私はいまからでも、もう一度始めたいの。
私は私に出来ることがある。そして、あなたにも、あなたにしか出来ないことがある。翠妖精ニミュエが触れたヴィヴィアンの前髪。だから、少しでも前を向いて。後悔を、後悔で終わらせたらいけない。そんな簡単なことを教えてくれたのは、息子、娘のような存在たち。だから、私たちは大人として、ケジメをつけよ。
天界ののどかな水砕館には、たびたび物騒な依頼が舞い込んでいた。ここに来たってことは、他言無用ということですね。行われた取引。私たちは歪な象徴。だけど、君たちがいなきゃ困る世界だってあるんだ。裏側にも、裏側の想いが存在していた。
聖戦は終わり、少しずつ平穏を取り戻しはじめた統合世界。それは、常界も例外ではなかった。各地の二次災害は鎮火の一途を辿る。だけど、どうしてこんなにすんなりと。そしてまた、その対処と平穏に、不吉な予感を感じずにはいられなかった。