幾億種の魔界植物が生い茂る眠れる森の最深部、緑に覆われた御城の最上階。バラの薫り包まれたイバラが立てる穏やかな寝息。彼女の眠りを妨げまいと、幾重にも茨を張り巡らせる自立型ドライバ【ブランブル】。即位問題なんて露知らず、今日も彼女は夢を見る。深い、深い、眠れる森の、深い、深い、眠りの中で。
今日も眠れぬ夜がくる、緑の女王がこぼした溜息。開かれた扉、漏れ出した光が育ませたドライバ【ブランブル・ソーラー】。そしてイバラを深い眠りから、夢の世界から呼び覚ました。眠れる森の眠れる夜を求め、重い体を持ち上げて、彼女は審判の日へと歩き出す。深い、深い、眠りの為に、深い、深い、茨の道を。
世界評議会の一員でもある絶対王制を提唱する者の直属の特務機関ナイツ・オブ・ラウンドに属する女剣士。帯刀するのは炎の可変式銃剣型ドライバ【ベドウィル】。コードネーム・ベディヴィアの名を背負う彼女はボスの側にいられるだけでいい、その為に彼女は自分すらも犠牲にする。その命が燃え尽きるまで。
審判の日を前に、業炎の甲士との激闘の中で、一途に聖王を想うその心が引き起こしたリボルバーシフトは、ドライバを【ベドウィル:リボルブ】へと可変させた。覚悟をみせた聖銃士へ託された「来るべき日の約束」、それは聖王の真意。来るべき日の訪れを止める為、彼女はその剣に、生き残ってみせると誓った。
優れた戦術的知能、指揮能力、そんな彼女にボスが与えたコードネーム・トリスタン。自らが戦場に赴くことは少なく、ボスに代わり指揮を執り、眼鏡の奥のその瞳は常に勝利だけを見つめていた。愛を込めて「ダンナ」と呼ぶ銃槍型ドライバ【イゾルデ】を手にした際は、機関内でもトップクラスの戦闘能力を誇る。
彼女を前線へと駆り立てたのは、交わった世界に差し迫る審判。聖王により授けられし聖銃士の証、白い隊服に袖を通し、傷一つ無いその細長く綺麗な指を純白の手袋で包み込む。トリスタンは白い手で愛するダンナ【イゾルデ:リボルブ】を握りしめ、戦場の荒波へと。穏やかな笑顔で、その先の勝利を見つめながら。
幻奏者は盤上の駒を眺めていた。何を企んでいるのかしら。そんな彼女に問いかけたのは闇魔女王。終わらない、幻想よ。そして彼女はクイーンを斜め前へ進める。この世界に、足りないものがあるの。そして手の平から出して見せたのはキングだった。
なぁ、ここはどこなんだ。目を覚ました第六世代自律型ドライバ【ルル】は神才へ問いかける。そういえば名前なんて気にしたこともなかったよ。そこで初めて神才はこの場所に興味を抱いた。ねぇ、ここはどこなのかな。そして、悪戯な神はこう答えた。ここはね、彼の為の、彼の為だけの王都ティンタジェルだよ。
ここが王都だとしたら、どうして民は一人もいないのかな。どうして王様しかいないのかな。その答えは簡単だった。もうすぐ、多くの民が集まってくるんだよ、一人ぼっちの王様の元にね。そっか、それはとっても楽しいことになりそうだね。そして神才は鼻歌を口ずさんだ。ルールルー、ラールラー、レーロッロロー。
やっぱり双子は萌えポイント高いよね。妖精と魔物だなんて、もう、たまらないよ。こうして第六世代自律型ドライバ【リリ】は神才の手により生まれた。私のことはね、お母さんって呼んでくれていいよ。ママでもいいかな。そして初めて開かれた口。了解ですよ、マスター。その一言に、神才は深く傷ついたのだった。
リーリリー、ラールラー、レーロッロロー。早速ね、君達にお仕事を頼みたいな。プログラムされた二人の堕ちた天才の名前。マスター、あと二人いるみたいですよ。なぜかプログラムされなかった二人の天才の名前。一人はね、もうすぐここに来ると思うんだ。もう一人はね、様子を見たいんだ。神才は楽しそうだった。
どういうおつもりでしょうか、お兄様。問いかけるシオン。それは長時間にわたり行われた竜王族会議のあとの出来事。賛成票は過半数を超えていました。なのに、どうして。埋まらなかった王の席。言ったろ、俺は好きにやらせてもらうって。お兄様は、竜界の平和ではなく、ご友人達を選ぶということなのでしょうか。
過ぎ去りし昨日に何を求めるのか。傷跡を癒す思い出だろうか、傷跡を抉る思い出だろうか。もう、あの頃は戻って来ないっていうのに。闇聖人シオンの心は晴れなかった。そう、だっていくらお兄様たちが頑張ったって、世界の決定は覆らないんだから。その日、六聖人の間では、一つの大きな決断が下されていた。