友を東館へと見送り、アオト達は北館の前を通り過ぎようとしていた。西館にお連れしないと、怒られちゃいますからねっ。そうおどけてみせたのは流水獣。だが、そんなアオト達の後ろ、大剣を携えた影が忍び寄る。どうして、オマエらがいるんだよ。
ある日を境に、オベロンの元へ人間の女は現れなくなった。だが、数日後、オベロンの元を訪れた足音。それは女のものではなかった。牢獄の鍵が壊れたって、人間の女が情報を売ってくれたんだ。こうして、オベロンは再び家族に裏切られたのだった。
数多の苦難を乗り越え、ヒスイへ届いた手紙。記されていた真実。密会が見つかったこと。幽閉されたこと。すべては禁忌の子を取り出す為ということ。そして、いまでもオベロンを愛している、と。差出人には「イグレイン」と記されていたのだった。
いや、返して。泣き叫ぶ声。それは、私達の子供なの。鳴り止むことのない悲鳴。あいつから、なにかを奪うんじゃねぇよ。あいつから、なにかを奪っていいのはオレだけなんだよ。こうして、かつての聖戦は、新たな聖戦へと繋がっていくのだった。