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放課後、いつも隣には一人の親友がいた。バーガーショップで話し込んでみたり、カラオケではしゃいでみたり、雑貨屋で可愛い小物を眺めてみたり。フリフリな洋服を好んだ親友と、ボーイッシュな洋服を好んだミドリ、そんな対照的な二人は趣味は違えど親友の証にと、お揃いの缶バッジを鞄につけていたのだった。
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やっぱり味噌よ。違う、塩だよ。そんなの質素過ぎるわ。味噌こそ邪道だって。もーアンタ本当に頑固ね。だって大好きなんだもん。花火大会の帰り、色違いの浴衣でそれぞれのキュウリを片手に歩いた砂利道。少女はそんな夏の日を思い出していた。
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あなた様に、ずっとお会いしとうございました。そんな言葉と共に、水咎刀士の前に現れた少女マリナ。わたくしが、あなた様のお力になってみせます。そして、ぶんぶんと碇型ドライバ【アンクル】を振り回してみせた。なぜ、僕のことを。わたくしは、知っているんですよ。あなた様の、お父様を、お母様を、弟様を。
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あなた様は気付いていたんでしょう。ご両親の歪んだ愛情に。出来の悪い兄と、出来の良い弟。虐待される兄と、優遇される弟。だから弟様は。ただ、気付いていないことが、一つだけ残っているんです。続く一人言を遮る一言。君は誰だ。わたくしは、水先案内人です。誰の差し金だ。それはまだ、言わない約束です。
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一人の魔物は、世界の為に竜になった。一人の妖精は、世界の為に神になった。そして一人の男は、竜であり、神だった。竜が神になったのか、神が竜になったのか、その答えを知るものはいない。ただ、そこに竜であり、神であるヒスイが存在していたことに変わりはなかった。あいつら、本当に昔から、変わんねぇな。
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俺より先に、老けてんなよ。竜神ヒスイが声をかけた初老の竜。その言葉から伝わる二人の関係。久しぶりに帰ってきたのにさ。多節棍型ドライバ【ズアオ:リミン】を手にした姿は、言葉とは逆に楽しそうだった。早く囚われの姫を、助けてやれって。視線の先は、竜王の玉座。当たり前だ。そして、竜王は立ち上がる。
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誰が世界を創ったのか。それは、神なのだろうか。では、誰が神を創ったのか。それは、世界なのだろうか。始まりと終わりが、表裏一体であるように、神と世界もまた、表裏一体なのではないだろうか。では、世界を愛する男は、神を愛することが出来るのだろうか。難しい話は、止めようぜ。ベニはそう言った。
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弱いから、負けたのか。いや、強いから、勝ったのか。炎獣神ベニはいつかの戦いを思い出していた。予期せぬ炎神の強襲と、その身を犠牲にしてまで我が子を守った炎才の一戦。結果、どうなったんだ。誰が、一番悪かったのか。考えごとは、そのくらいにしておきましょう。優しく声をかけたのは、神主狐だった。