とある会議の場、いつも居たはずの二人が姿を消していた。始まった戦争。だが、最高幹部である男は違和感をぬぐえずにいた。まるで、初めから止めるつもりはなかったようだ。そして、その会議の場に現れたもうひとつの違和感。私は、初めからここにいましたよ。とある会議の場、そこにはロプトが存在していた。
誰の差し金だ。男の口をついた言葉。いや、んな質問は要らねぇな。そう、愚者ロプトの姿から、なにかを隠そうとする気は微塵も感じられなかった。私はただ、声なき指令に従うだけ。どうぞお見知りおきを。評議会に入り乱れる思惑。そして、更なる違和感が場を包む。わたくしも、潜り込ませていただきましたよ。
人は、人と意思を通じ合わせる為に言葉を生みだした。だが、人は、意思が通じれば通じるほど、言葉を必要としなくなる。であれば、声なき指令は、最上級の指令なのだろうか。それとも、誰かに悟られないようにと、意思を塞いだ指令なのだろうか。
少女は夜が好きだった。訪れる静寂、紫色に染まる街、暗く深い「闇」に包まれていた。だが、刻は過ぎ、少女は優しい闇に包まれていた。死神のごとく、振り払う鎌が切り開く未来。あの日の少女は夜明けを求めた。そう、夜明けの先のイマを求めた。
光り輝く太陽の様な笑顔、少女はいつも笑っていた。楽しい時も嬉しい時も、哀しい時も苦しい時も、笑うことしか出来なかった少女。そんなあの日の少女は、最後まで笑顔だった。振り回される大剣。すべてはそう、イマの世界で笑い合うために。
少女は走る、誰よりも早く、今を駆け抜ける為に。小さくも巻き起こした「風」を身に纏って。あの日の少女が巻き起こした小さな風は、やがて大きな風に。構えられた棍はイマの世界への風穴を開けるために。世界さえも変えるほどの、大きな風へと。
ぽつり、ぽつり、降りだす雨。そんな空を虚ろな瞳で眺める少年の空いた心を埋める様に、滴り落ちていた雫。だが、その雫がもたらした恵み。あの日の少年が振るった一対の刀。悲しみの雨空を切り開き、イマの世界へ希望という虹をかけるために。
そして少年は「炎」に出会った。そして少年は「みんな」に出会った。いっぱい転んだ。だけど楽しかった。いっぱい泣いた。だけど楽しかった。思い出すのは、楽しかった出来事ばかり。俺たちはイマを生きるよ。行こう。開かれた扉の、その先へ―。
オズたちが駆けつけたとき、すでに戦いは幕を下ろしていた。立ち尽くすアカネたち6人。目の前に浮かぶディバインゲート。その間に横たわるひとりの男。はは、そんな、嘘だ、嘘でしょ、ボクは認めないよ。ねぇ、どうしてだい、ボクは、ねぇ―。